東野圭吾『虚像の道化師』感想/謎を解くことだけが探偵の仕事ではない

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 謎を解いて犯人を追い詰めるミステリーはお好きですか?

 私はもちろん大好きですが、東野圭吾さんの小説『虚像の道化師』の主人公は謎を解いて終わりではありませんでした。謎を解いた後に、関係者たちを励まそうとするんですよね。

 ガリレオシリーズの7作目とあって、人間として成長した湯川准教授の優しさに胸が熱くなる物語です。




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 念じるだけで人を殺すことができる教祖が登場

 では、あらすじから。

 宗教法人「クアイの会」の教祖・連崎至光は念じるだけで人を自由に操ることができると言います。

 実際、連崎が「教団の中に裏切り者がいる」と言い出し念を送り始めると、裏切り者だと指摘された幹部が悲鳴を上げ、畳の上でのた打ち回りはじめました。

 彼らの取材に来ていた週刊誌記者は、目の前で起こったその出来事をパフォーマンスだと思って冷めた目で眺めていましたが…。

 その直後に、裏切り者だと指摘された幹部がビルの5階から飛び降りたのです。もちろん、助かるはずなどありません。

 こうして、週刊誌記者は彼の能力を信じざるを得なくなりましたが、一方の連崎は幹部を死に追いやった責任を感じていると言って警察に出頭してきました。

 しかし、警察は連崎を逮捕することができませんでした。念を送って人を殺すことなど不可能だからです。

 そこで湯川が登場するわけですが、連崎が使ったトリックとは…。

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 謎を解くことだけが探偵の仕事ではないと思える物語

 この続きは実際に本書を読んでもらうとして、東野圭吾さんの小説『虚像の道化師』は全7編の短編で構成されています。

 ここで、他の6篇について簡単に紹介しておくと、

・幻聴に悩まされていた人たちが自殺や傷害事件を起こす
・山奥の別荘地で有名な作曲家の夫婦が殺害される
・舞台女優が演出家の遺体に偽装工作を行う
・鞄の中身を透視することができるホステスが殺害される
・球団から戦力外通告を受けていた野球選手の妻が殺害される
・双子の妹がテレパシーで姉が男性に襲われる姿を目撃したと主張する

 です。これまでのガリレオシリーズの短編集に比べると謎解きよりも、人間ドラマに焦点が当てられているので、謎を解くことだけが探偵の仕事ではないと思えてきます。

 ネタバレになるので詳しくは書きませんが、殺された妻のメッセージを読み解いて残された夫を励ましたり、偽装工作をする女性を庇うなど、これまでとは一味違う湯川准教の優しさが垣間見れるんですよね。

 それだけでなく…。

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 他人を思いやる湯川准教授に胸が熱くなる物語

 草薙の同期で、彼に嫉妬していた刑事にまでこんなことを言います。

「現象を分析するには、すべての可能性を探る必要がある。つまり誰かがアイデアを出した場合には、とりあえずそれを尊重しなければならない。検証することもなく、ただ自分の考えや感覚と合わないからという理由だけで人の意見を却下するのは、向上心のない怠け者のやることだ」

「人の意見に耳を傾け、自分のやり方や考え方を常にチェックし続けるのは、肉体的にも精神的にも負担が大きい。それに比べて、他人の意見には耳を貸さず、自分の考えに固執しているのは楽だ。そして楽なことを求めるのは怠け者だ。違いますか」

 これまで他人と距離をとってきた湯川とは思えない発言に胸が熱くなります。

 このように、東野圭吾さんの小説『虚像の道化師』は、謎を解くことだけが探偵の仕事ではないと思えるだけでなく、

 ミステリーとしても、ガリレオシリーズの続編としても、湯川の優しさに胸が熱くなる物語としても楽しめるので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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