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 サンタクロースを信じていますか?

 私は小さい頃から信じていませんでした。家が貧乏だったので、プレゼントをもらえなかったからです。

 しかし、伊坂幸太郎さんの絵本『クリスマスを探偵と』を読んでサンタクロースを信じてみたくなったんですよね。

 大人にも子どもにも読んで欲しい絵本です。

 人の底意地の悪さばかりを見てきた探偵が主人公の物語

 物語の主人公はカールという探偵。彼はクリスマスにもかかわらず、ある男の浮気調査をしていました。

 もちろん、今日が特別なわけではありません。普段から夫の浮気や妻の不貞、婚約者の身元、息子の行方など、げんなりするような、現実的な事柄ばかり調査しています。

 それだけでなく、カール自身が人を陥れて食い扶持を稼いだこともありました。

 そんな彼が今回尾行していた男は、尾行されていることにまったく気づかずに浮気相手と思われる投資家の女性の家に入っていきました。

 その姿を見届けたカールは、「今回は簡単な調査だったな」と近くにある公園から最後まで見届けようとベンチに座ったところ…。

 先にベンチに座っていたサンドラと名乗る男性から声をかけられました。

 探偵もサンタクロースを信じていた頃があった

 サンドラはカールが探偵であることを見抜きます。そのことでサンドラに興味を持ったカールは、彼との会話を重ねていくなかで、クリスマスの嫌な思い出を語り始めました。

 カールの家は画材屋でした。家族3人がどうにか暮らしていけるだけの稼ぎはありましたが、父は新しいことが何ひとつない日々に嫌気がさしていました。

 だからこそ、父は普段から機嫌が悪く、他所の女と浮気をしていました。サッカーチームの監督をしているという嘘をついて外出していたのです。

 そんな不機嫌な父と生活をしていたカールが唯一楽しみにしていたのがクリスマスです。年に一回だけ欲しいものがもらえるからです。

 もし、サンタクロースが実在しなければ、父はプレゼントをねだるカールを怒鳴るはずです。しかし、そうはならずにプレゼントが届いていたので、本当にサンタクロースがいると信じていました。

 ところが15歳になったカールは、本当にサンタクロースがいるのか確かめたくなります。そこでカールの家では手が届かないような高価な自転車を頼むことにしました。

 翌朝目を覚ますとその自転車が届いているではありませんか。カールは「サンタクロースはいるんだ」と喜び、手に入れた自転車に乗って街をひとまわりしました。

 しかし、家に帰ってくると母が泣き叫んでいました。「なぜ指輪を売ったの!」と父を責めていたのです。

 そのことを知ったカールはすべてが嫌になって家を出ることにしました。そして、探偵になって今に至るのですが、その話を聞いたサンドラは…。

 視点を変えれば世界が変わる

 実は父がサンタクロースだったのでは?と推理します。

 浮気を疑うことになった女性の毛はトナカイのもので、サッカーチームの監督というのは、実はトナカイの飼育だったとしたら?

 さらに、指輪を売ったのも自転車を買うためではなく、その指輪を欲しがっている子供がいたとしたら?とこじつけを言うんですよね。

 もちろん、カールは冗談として受け止めていましたが、この後に続く彼の言葉を聞いて信じてみたくなりました。その言葉とは…。

 この続きは実際に本書を読んでもらうとして、伊坂幸太郎さんの絵本『クリスマスを探偵と』を読めば、視点を変えれば世界がガラリと変わることがわかります。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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