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 伊坂幸太郎さんの小説『チルドレン』は、家裁調査員という聞きなれない職業を目指す学生時代と、その職業に就いてからの出来事を描いた物語です。『サブマリン』という続編が出ているので、復習の意味もこめて再読したのですが、本当に面白かった。電車の中で笑顔がこぼれて困ったくらい。

 主人公は、反抗的でひねくれていて、自信家で、何事も断定するクセがある陣内。パンクロックが大好きで、「パンクロックってのは、立ち向かうことなんだよ」といっては、父親に立ち向かっていた彼が、銀行強盗の人質になったり、レンタルビデオ店の店員にフラれて時間をとめたり、家裁調査員として奇跡を起こしたりする短編集です。

 そんな彼が、盲目の友人・永瀬に向かって言ったセリフがとても印象的でした。

 「ふざけんなよ」

 永瀬は目が見えないので、ときどき見知らぬ人からお金や食べ物をもらいます。あげている人たちは、「目が見えないなんて大変だよね。私にはこれくらいしかできないけれど…」という親切心でお金や食べ物を渡しているのでしょうが、永瀬にとっては迷惑な話。彼にとっては「目が見えない」のは当たり前のことで、そんな理由で「可愛そうだ」なんて思って欲しくない。ましてや、お金や食べ物を恵んで欲しいとは、これっぽっちも思っていないからです。

 だから永瀬は、「ふざけんなよ」という陣内の言葉を「お金を与えてきた人」に向けられた言葉だと思っていたのですが、実は違いました。

 「何で、お前だけなんだよ!」

 驚いた永瀬は、「たぶん、僕が盲導犬を連れているから、じゃないかな。目も見えないし」と答えますが、「関係ないっつうの。ずるいじゃねえか」と陣内は喚きます。

 このやり取りを読んで、「あー、人と対等に付き合うってことは、こういうことなんだな」と妙に納得することが出来たんですよね。

 そういう意味では、アメリカ大統領に就任することが決まったトランプ氏も、日本を対等に扱う人のように思えます。

 「日本は我々にタダで守ってもらっている!日本人のためにアメリカ兵が死ぬんだぞ!ずるいじゃねえか!」

 私たちは、「誰とでも対等に付き合う必要がある」と言いながらも、心のなかでは自分と他人を比較して優劣をつけてしまいがち。「目が見えないなんて可愛そう。何か恵んであげないと」「日本は弱い国なので、アメリカに守ってもらわなければ」などなど。

 しかし、こんな心構えでは誰とも対等に付き合えませんよね。本当の友人なんて絶対にできませんよね。

 というわけで、人と対等に付き合うには、「物事をフラットに見るクセ」をつける必要があるなぁ…と気づかされた小説でした。他にも「ハッ!」とするような名言が山ほどあるので、読んでみてはどうでしょうか。きっと、琴線に触れるセリフに出会えると思いますよ。

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