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 誰とでも対等に付き合っていますか?

 私は対等に付き合っていると思っていましたが、伊坂幸太郎さんの小説『チルドレン』を読んで反省しました。自分より能力が劣っていると思っている人たちに対して、上から目線で接していることに気づいたからです。

 目が見えない人とどう付き合う?

 物語の主人公・陣内は、銀行強盗に巻き込まれたとき、偶然居合わせた盲目の青年・永瀬と知り合いになりましたが、陣内の永瀬に対する接し方は他の人とは違いました。

 それがよくわかるシーンが、永瀬が見知らぬおばさんから五千円もらったときの話。

 永瀬は目が見えないので、ときどき知らない人からお金や食べ物をもらいます。

「目が見えないなんて大変だよね。私にはこれくらいしかできないけれど…」

 という善意の気持ちでやっているのでしょうが、永瀬にとっては迷惑な話。なぜなら、「目が見えない」のは当たり前のことで、可哀想なことではなかったからです。

 その話を聞いた陣内は、

「ふざけんなよ」

 と怒ります。しかし、おばさんの見下したような態度に怒っているわけではありませんでした。

「何で、お前だけなんだよ!」

 と、羨ましがっていたんですよね。「たぶん、僕が盲導犬を連れているから、じゃないかな。目も見えないし」と永瀬自身がフォローするほど自然体でした。

 実は、これこそが人と対等に付き合うということ。私は障害のある人をみると「可哀想だな」なんて上から目線になっていたので深く反省しました。

 子どもと対等に付き合ってる?

 これは子どもに対しても同じです。上から目線で命令したり、叱ったり、甘やかしたりしがちですが、それでは対等に付き合っているとは言えません。

 もちろん、ある程度は仕方ない部分もありますが、それが行き過ぎると、子どもの自立する機会を奪ってしまいます。ロボットのように命令されないと行動できなくなってしまいます。

 一方で、強く反発する子供もいます。悪質な犯罪に手を染めるケースもあるでしょう。

 そんなとき、駄目な奴はどうやったって駄目なんだ。更正させるなんて、奇跡みたいなもんだよ…と思いがちですが、陣内は、

「そもそも、大人が格好良ければ、子供はぐれねえんだよ」

 って言うんですよね。なるほど。大人が格好悪いから、尊敬できないから、グレるんですか。

 尊敬される大人になって奇跡を起こそう

 それなら、子どもを変えようとするのではなく、まずは私たち大人が変わること。人を見下すような格好悪い大人ではなく、人と対等に付き合い、良い影響を及ぼせる大人になる必要があります。

 そんな格好いい大人になれば、グレた子どもたちを更生させることができるかもしれません。私もそんな大人になって、陣内のような奇跡を起こしていきたいと思います。

 ◆

 伊坂幸太郎さんの小説『チルドレン』。読めば、人と対等に付き合うとはどういうことかよくわかる物語です。気になった方はぜひ。

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