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 誰とでも対等に付き合っていますか?

 私は誰とでも対等に付き合っているつもりでしたが…。伊坂幸太郎さんの小説『チルドレン』を読んで反省しました。

 自分より能力が劣っていると思っている人たちに対して、上から目線で接していることに気づいたんですよね。

 少年事件を担当する家裁調査官が主人公

 では、あらすじから。

 物語の主人公は家裁調査官の陣内。彼がまだ学生だった頃、友人の鴨居と一緒に行った銀行で、銀行強盗に遭遇したことがありました。

 強盗犯は彼らを縛りつけて銃で脅しますが、陣内はこの状況を楽しんで犯人たちに文句を言ったり、歌を口ずさんだりします。

 そんな陣内の行動に鴨居は冷や冷やしていましたが、その場に居合わせた盲目の青年・永瀬は、むしろ陣内の行動を楽しんでいました。

 だからこそ、彼らは意気投合して、仲良くなったわけですが…。

 陣内は、本当の意味で永瀬を特別扱いしないんですよね。それがよくわかるシーンが、永瀬が見知らぬおばさんから五千円をもらったときの話です。

 永瀬は目が見えないので、ときどき知らない人からお金や食べ物をもらいます。

「目が見えないなんて大変だよね。私にはこれくらいしかできないけれど…」

 という善意の気持ちでやっているのでしょうが、永瀬にとっては迷惑な話でした。なぜなら、彼にとって「目が見えない」のは当たり前のことで、可哀想なことだとは思っていなかったからです。

 この話を聞いた陣内は、

「ふざけんなよ」

 と怒ります。永瀬は、おばさんの見下したような態度に怒っているのだと思いましたが、実は…。

「何で、お前だけなんだよ!」

 と、羨ましがっていたんですよね。「たぶん、僕が盲導犬を連れているから、じゃないかな。目も見えないし」と永瀬自身がフォローしなければいけないほど、陣内は本気で怒っていました。

 実は、これこそが「人と対等に付き合っている」ということ。私は障害のある人たちをみると、おばさんと同じように「可哀そうだな」なんて上から目線になっていたので、深く反省しました。

 子どもと対等に付き合ってる?

 子どもに対しても同じです。上から目線で命令したり、叱ったり、甘やかしたりしがちですが、それでは対等に付き合っているとは言えません。

 もちろん、ある程度は仕方ない部分もありますが、それが行き過ぎると、子どもの自立する機会を奪ってしまいます。ロボットのように命令されないと行動できない子供になってしまうんですよね。

 とはいえ、そうした親の行動に反発する子供もいます。悪質な犯罪に手を染めるケースもあるでしょう。

 そんなとき、駄目な奴はどうやったって駄目なんだ。更正させるなんて、奇跡みたいなもんだよ…と思いがちですが、陣内は次のように考えていました。

「そもそも、大人が格好良ければ、子供はぐれねえんだよ」

 だからこそ、陣内は格好良い大人の代表になろうと、少年を担当する家裁調査官になったわけですが…。

 万引きをした少年に芥川龍之介の『侏儒の言葉』という本と一緒にトイレの落書きメモを渡したり、母に浮気をされた不甲斐ない父を持つ少年を自分のライブに招待したりと、格好良いのか悪いのか、よくわからない行動をとります。

 とはいえ、なぜか最後には格好良くみえてしまうのが不思議なんですよね。

「子供のことを英語でチャイルドと言うけれど、複数になるとチャイルズじゃなくて、チルドレンだろ。別物になるんだよ」

 なんてふざけたことばかり言ってますが。

 尊敬される大人になって奇跡を起こそう

 というわけで、伊坂幸太郎さんの小説『チルドレン』は、陣内の行動を通して、人と対等に付き合うとはどういうことかがよくわかる物語です。

 それだけでなく、陣内のように、子供から尊敬される大人になっていこうと思える物語でもあるんですよね。

 もちろん、伊坂幸太郎さんらしく心に残るセリフと驚きが満載の物語なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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