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(※『チルドレン』表紙より)


 人と対等に付き合っていますか?

 私は対等に付き合っていると思っていましたが、伊坂幸太郎さんの小説『チルドレン』を読んで反省しました。障害のある人たちを「可愛そう」という視点で見ていることに気づいたからです。

 今回は『チルドレン』のあらすじとおすすめポイントを紹介します。

 『チルドレン』のあらすじ(『チルドレン』)

 家裁調査官――警察や裁判官と違い、少年を裁くのではなく、少年犯罪の原因やメカニズムを解明し適切な処遇を裁判官に意見として提出する――要するに、少年の敵ではなく、信頼してもらい、本心を打ち明けてもらう仕事をしている武藤。

 そんな武藤のもとに万引きをした志郎くんが父親と一緒にやってきました。

 武藤は志郎くん親子と面接をしますが、何も話してくれません。それだけでなく、父親は志郎くんに興味をもっていないように見えました。

 そこで武藤は、

「子供のことを英語でチャイルドと言うけれど、複数になるとチャイルズじゃなくて、チルドレンだろ。別物になるんだよ」

 なんてセリフを吐き続ける口達者な先輩・陣内のアドバイスに従って、芥川龍之介の本を渡して様子を見ることに。

 そうしてしばらく経った頃。志郎くんと再会した武藤は、彼らの様子が変わったことに気づきます。前回の面接とは打って変わって、打ち解けているように思えたのです。

 その日から彼らは口を揃えて「あの時から状況が変わったんだ」と言うようになりました。一体何が起こったのか!?

 『チルドレン』のおすすめポイント

1. 短編集のふりをした長編小説

 『チルドレン』は全5章からなる短編集です。

 しかし、伊坂幸太郎さんお得意の「短編集のふりをした長編小説」で、登場人物は変わらず、物語の語り手と舞台、時間軸だけが変わっていくんですよね。

 主な登場人物は次の5人。

・口達者な家庭調査官・陣内
・その後輩・武藤
・陣内の友人・鴨居
・銀行強盗と遭遇したときに知り合った盲目の青年・永瀬
・その彼女・優子

 終盤になるにつれて、それぞれの物語がつながっていくのが面白い小説です。

2. 人と対等に付き合うとはどういうことかわかる

 銀行強盗と鉢合わせになった陣内と盲目の青年・永瀬。これがきっかけで彼らは知り合いましたが、陣内の永瀬に対する付き合い方は他の人とは違いました。

 それがよくわかるシーンが、永瀬が見知らぬおばさんから五千円もらったときの話。

 永瀬は目が見えないので、ときどき知らない人からお金や食べ物をもらいます。

「目が見えないなんて大変だよね。私にはこれくらいしかできないけれど…」

 という善意の気持ちでやっているのでしょうが、永瀬にとっては迷惑な話。なぜなら、「目が見えない」のは当たり前のことで、可哀想なことだとは思っていなかったからです。

 その話を聞いた陣内は、

「ふざけんなよ」

 と言います。永瀬は陣内がおばさんに対して怒っているのだと思いましたが、次の言葉を聞いて驚愕しました。

「何で、お前だけなんだよ!」

 陣内は、羨ましいじゃないか、と怒っていたんですね。

 「たぶん、僕が盲導犬を連れているから、じゃないかな。目も見えないし」と永瀬がフォローしなければならないほど、とても自然な会話でした。

 私たちは障害のある人をみると「可哀想だな」なんて上から目線になりがちです。しかし、人と対等に付き合うとは陣内と永瀬のような関係なんでしょうね。

 人との付き合い方を考えさせられる物語です。

3. 陣内が起こす奇跡に感動!?

 『チルドレン』は、陣内が奇跡を起こす物語です。

 なかでも『チルドレンⅡ』は、爽やかで感動的な物語。読み終えた時には笑顔になれること間違いなし!?

 ぜひ実際に読んで、陣内が起こす奇跡に感動してください。

 最後に

 伊坂幸太郎さんの小説『チルドレン』。読めば人との付き合い方を見直したくなる物語です。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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