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 「こんなはずじゃなかった…」と、大人になった自分に幻滅している人たちも多いだろう。私もそのひとりだ。子どもの頃に思い描いていた「大人になった自分」は、もっと夢や希望で溢れていた。憧れの職業につき、大きな家に住み、奥さんや子どもたちに囲まれて楽しい毎日を過ごしている――そんな世界を夢見ていた。ところが、現実はどうだ。思い描いていた暮らしとはほど遠いではないか。

 このような悲しい現実に直面したとき、私たちは一発逆転を夢見る。たとえば、競馬やパチンコ、あるいは宝くじに当選して、これまでの不甲斐ない自分を帳消しにしようとする。株やFXなどで一儲けしようとするのもそうだろう。とにかく「お金の力」に頼って一発逆転を夢見てしまう。

 小説『キャプテンサンダーボルト』の主人公・井ノ原悠もそのひとり。彼は結婚して子供に恵まれていたが、四歳になる息子の「原因不明のアレルギー」に悩まされていた。莫大なお金をかけて最新医療で治療しているものの、治る気配はない。すでに借金は膨れ上がり、借金取りに追われる毎日を過ごしている。妻もノイローゼ気味だ。

 もうひとりの主人公・相葉時之も一発逆転を狙っているひとり。彼は、怪しい芸能事務所に騙され、AV女優にされそうになった後輩を救おうとしたところ、その後輩に騙されて莫大な借金を背負うことになった。しかも、その借金のために、年老いた母が実家の雑貨店を手放すことになる。これまでも迷惑をかけっぱなしだった母に追い打ちをかけることになってしまった。だから、相場は「人生のすべて」をかけて一発逆転することを決意する。

 そんな相葉に絶好のチャンスが訪れる。友人のひとりが健康水を使った詐欺にあい、大金をだまし取られたというのだ。「そんな大金を持っているヤツがいるのなら、そいつから金をむしり取ればいい」――そう考えた相葉は、詐欺師から大金をだまし取る計画を立てる。そして、どうにか詐欺師とアポイントをとった相葉だったが、待ち合わせ場所のホテルの一室に現れたのは、詐欺師ではなく別人だった。どうやらホテルの従業員が誤って別人にキーを渡してしまったらしい。

 こうして別人と会うことになった相葉だったが、相葉と会う予定だった詐欺師も同時刻に別人と会っていた。ロシア人ギャングたちだ。その結果、詐欺師は殺されてしまう。「待ち合わせ相手ではなかった」というたったそれだけの理由で。つまり、相葉が会っていた人物はロシア人ギャングと待ち合わせをしていた人物、ギャングの一味だったのである。

 ロシア人ギャングの一味は、相葉が待ち合わせ相手ではないことに気づくと、相葉を殺そうとする。相葉に残された道は「どうやって逃げ延びるか」だけだ。しかし、タダでは逃げないのが相葉のすごいところ。ギャングがスマホを大事そうに扱っている姿をみた相葉は、「これを盗めば金になるのではないか?」という機転を働かせ、スマホを奪って逃走する。ここから相葉の一発逆転劇が始まる。

 相葉は偶然再会した井ノ原を巻き込んで、ロシア人ギャングから金をむしり取ろうと行動を起こしていく。途中、毒薬を飲まされたり、人の首が吹っ飛んできたり、乗っていた車が爆発したりと、散々な目にあった相葉と井ノ原だったが、最後まであきらめずに闘い続けた結果、予想もしていなかった未来が切り開けることになった。

 さて、この物語からわかることは、一発逆転を実現するには、これまで避けてきた問題がまとめて同時にやってきたような大きな困難――毒薬を飲まされたり、人の首が吹っ飛んできたり、乗っていた車が爆発したり、を乗り越える必要があることがわかる。自分の限界を超えて、困難を乗り越えた先にまっているのが「一発逆転」であることがわかる。

 あのカーネル・サンダース氏もそうやって「一発逆転」を実現している。彼がケンタッキー・フライドチキンの事業を始めたのは65歳。当時、無一文だった彼は、年金で生活していたのだが、かつて経営していたレストランのメニュー「フライドチキン」のつくり方とスパイスのレシピを売ることを思いつく。

 しかし、現実は甘くはなかった。年老いたカーネル氏の飛び込み営業に耳を貸してくれるレストランなどなかった。実際、カーネル氏は1000件以上も断られ続けたという。それでも彼はあきらめなかった。自分を信じて行動し続けた。その結果、ケンタッキー・フライドチキンの「今」が出来上がったのである。つまり、自分の限界を超えて、困難を乗り越えたからこそ、「一発逆転」できたのである。

 では、あなたはどうだろうか。競馬やパチンコ、あるいは宝くじに当選したり、株やFXなどで一儲けすることを夢見ていないだろうか。もし、そうだとしたら、それは「正しい一発逆転」のやり方ではない。目の前にある困難を一度に引き受け、それをマイナスからプラスへと転じる努力が「一発逆転」である。そうすれば、相葉や井ノ原たちのように、思ってもみなかった未来が切り開けるだろう。

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