芦沢央『カインは言わなかった』感想/プロと素人の間には想像を絶する差がある

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 プロフェッショナルな仕事をしていますか?

 私はプロとして通用する仕事をしようと努力していますが、芦沢央さんの小説『カインは言わなかった』を読んで、プロと素人の間にある差に愕然としました。

 プロは人生のすべてを捧げるくらい仕事に情熱を注ぎ込んでいるんですよね。それだけでなく…。




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 人生のすべてをバレエに捧げる人たちの物語

 では、あらすじから。

 物語の舞台は、誉田喜一が率いるバレエ団・HHカンパニー。

 彼は「世界のホンダ」と呼ばれるほど、芸術監督として高い評価を受けていましたが、キャストに対しては、ブラック企業よりも厳しいレッスンをさせていました。

 藤谷誠も彼の厳しいレッスンを受けているひとり。その厳しさは尋常ではありませんでした。

 誠は、次回公演予定の「カイン」の主役に抜擢されましたが、旧約聖書における「人類最初の殺人者」であるカインの感情を再現するために徹底的に追い詰められます。

 合宿ではろくに眠らせてもらえず、夜中にいきなり起こされて、怒鳴られ、マネキンに貼り付けられた豚か牛か鳥だかの肉に、本物の包丁を突き刺す練習を何度もさせられます。

 本当に誉田を殺したくなるほどの罵声を浴びせられ、プライドを傷つけられ、身も心もズタズタにされました。

 しかし、これほど厳しいレッスンに耐えたのに、誠は本番三日前に「カインに出られなくなった」というメールを彼女に送り、行方をくらませるんですよね。

 その理由は…。

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 心の弱い人たちも多数登場

 この続きは実際に本書を読んでもらうとして、この物語にはストイックな生き方をする人たちとは対照的に、心の弱い人たちも多数登場します。

 皆元有美もそのひとり。彼女は藤谷豪という芸術家と付き合っていましたが、彼の言いなりになっていました。

 居酒屋でキスをされたり、胸を揉まれたりしても、豪の機嫌を伺って何も言えず、性的な道具として扱われます。

 それだけでなく、豪はある女性の裸体を何年も描き続けていましたが、それほど執着している女性との関係も何も説明してもらえませんでした。

 しかし、それでも有美は、豪には私が必要だと信じて、彼の言いなりになるんですよね。

 まるで自分がどうしても必要だと思い込んでブラック企業で働き続けている人たちのように。

 そんな彼女の姿をみていると…。

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 プロと素人の差とは?

 プロと素人の差がはっきりと見えてきます。プロは自分で決めたことをストイックに挑戦し続けますが、素人は有美のように他人に左右されて生きています。

 食べるのも、眠るのも、人と話すのも、セックスをするのも、怒るのも悲しむのも喜ぶのも驚くのも傷つくのも、全てが自分のためか、他人の目を気にしてか。

 この差がプロと素人の決定的な違いなんですよね。

 芦沢央さんの小説『カインは言わなかった』は、プロと素人の差がハッキリとわかる物語なので、プロダンサーたちのように、本当に好きな仕事に情熱を注ぎ込みたくなりますが…。

 それだけでなく、サスペンスとしても、最後に驚きが待っている物語としても楽しめるので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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