人とのつながりを大切にしていますか。
私は大切にしているつもりでしたが、よくよく考えてみると、仲のいい人たちとの関係をおざなりにしているように思えてきました。
伊坂幸太郎さんの小説『バイバイ、ブラックバード』を読んで、いつかは別れがやって来る…という当たり前のことに気づき、
今目の前にいる人たちとの関係を心から大切にしたいって思えたんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 5人の女性と同時に付き合っていた主人公の物語に興味がある人
- 人とのつながりを大切にしたいと思っている人
- 最後に驚きと感動が味わえる物語が好きな人
- 伊坂幸太郎さんの小説が好きな人
あらすじ:五股をしていた主人公の物語
物語の主人公は会社員の星野一彦。
彼はお金のトラブルが原因で、知らない間にどこかの恐ろしい人物の機嫌を損ねてしまい、2週間後にバスに乗せられて怖ろしい場所に連れて行かれることになりました。
そして、バスに乗るまでの2週間、監視役としてやってきたのが繭美です。
繭美は身体もでかければ、腕も脚も太く、何から何まで規格外。おまけに態度も大きく肝も据わっていました。
一彦はそんな繭美に「付き合っていた5人の女性に別れを告げに行きたい」とお願いします。
繭美は面倒なことを嫌がる性格でしたが、五股をしていた男が別れを告げに行くという話に興味を持ち、許すことにしました。
ただし、繭美と結婚するという嘘の理由をつけて別れを告げろって言うんですよね。
こうして、一彦は繭美と一緒に付き合っていた5人の女性に別れを告げに行くことになりましたが、彼女たちとの別れは読んでいてツライものがありました。
なぜなら…。
出会いと別れのすべてが愛おしく思える
それぞれの女性との愛おしくなるような出会いと別れが描かれているからです。
たとえば、苺狩りで出会った女性・廣瀬あかりは一彦と別れることに納得しませんでしたが…。
なぜか繭美の提案で、近所のラーメン屋で一彦がジャンボラーメンの大食いに挑戦し、成功したら別れるという話になりました。
そしてあかりは、一彦が必死になってラーメンを食べる姿をみて、別れることに納得します。
そんな一彦想いの廣瀬あかりに胸がギュッと締め付けられます。
他にも、刑事に車を持っていかれて途方に暮れていた一彦を車に乗せてくれたシングルマザーの霜月りさ子や、
深夜にロープを抱えて歩いていた如月ユミとの出会いと別れも興味深いのですが…。
私が特に胸が締め付けられたのが、耳鼻科で出会った神田美奈子と、有名女優である有須睦子との出会いと別れでした。
これらの物語はぜひ実際に読んで欲しいので、あまり詳しくは書きませんが、
神田美奈子には乳がんの疑いがあり、精密検査の結果が出る直前に一彦に別れを告げられます。
有名女優である有須睦子は一般人の一彦にたまたま興味をもって付き合ったと思っていましたが、実は…。
というように、読めば胸がギュッと締め付けられるような出会いと別れが描かれています。
読んでいて、出会いと別れのすべてが愛おしく思えてくる物語なんですよね。
それだけでなく…。
繭美までもが愛おしく思えてくる
規格外の女性である繭美までもが愛おしく思えてきます。
繭美は幼稚園の入園日に、近所の荻野目君から「怪獣女」と言われたことに怒り、彼の手首を折ったところから人生がはじまりました。
今は辞書を片手に、「常識」「気遣い」「マナー」「悩み」「色気」といった言葉を塗りつぶし、私にはそのようなものはないと言い張っています。
しかし、そんな彼女だからこそ、歯に着せぬ物言いをし、一彦とその彼女たちに本質を突きつけます。
たとえば、神田美奈子が乳癌の検査待ちであることを知った一彦が検査結果を知りたいと言うと、
「いいか、星野ちゃん、おまえはな、自分のことしか考えてねえんだよ。<あのバス>に乗って、連れて行かれる間、あの女の癌のことを心配しているのが耐えられねえだけだ。だから、事前に検査結果を知って、気がかりを一つでも減らしておきたいな、ってそれだけだ。あの女のことなんじゃなくて、おまえは、おまえ自身のために、検査結果を知りたいだけだ。そうだろう?」
と言うんですよね。他人から奇異の目で見られ続けてきた女性ならではの視点です。
一彦はそんな繭美のことを、ときどき美しく思うようになりました。他の女性とは一味違う繭美の魅力にどんどん惹きつけられていくんですよね。
そんな彼らの姿をみていると…。
今目の前にいる人たちとの関係を心から大切にしたいって思えてきます。
このように、伊坂幸太郎さんの小説『バイバイ、ブラックバード』は、出会いも別れもすべてが愛おしく思えてくる物語ですが、
それだけでなく、サスペンスとしても、驚きが用意されている物語としても楽しめるので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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