首都圏連続不審死事件をご存知ですか。
多くの男性を虜にして多額の経済的援助を引き出すことに成功した女性・木嶋早苗さんが犯した殺人事件です。
しかし、彼女は若くもなく、美しくもなく、スリムな体型でもありませんでした。
そんな彼女が、なぜか多くの男性を手玉に取ることに成功したのですが、柚木麻子さんの小説『BUTTER』は、その真相に迫る物語なんですよね。
読み始めると、続きが気になって止まらなくなります。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 首都圏連続不審死事件に興味がある人
- 木嶋早苗さんがなぜ多くの男性を手玉に取ることができたのか知りたい人
- 自分らしく生きたいと思っている人
- 柚木麻子さんの小説が好きな人
あらすじ:誰よりも自分らしく生きる加害者の物語
物語の主人公は、週刊誌記者の里佳。
彼女は連続殺人事件の容疑者として逮捕された梶井真菜子に興味を抱いていました。
なぜなら、梶井は魅力的な要素がないのに、多くの男性を手玉にとっていたからです。
世の中の多くの女性は、若さと美しさ、スリムな体型を手に入れようと必死になっています。
ダイエット本やダイエット食品が飛ぶように売れたり、ライザップが流行ったり、
中年女性が美魔女を目指したりと、若さと美しさ、スリムな体型を手に入れるために多くの時間とお金をつぎ込んでいます。
ところが、梶井真菜子は、その要素をどれひとつとして持っていませんでした。むしろ、その逆です。
それにも関わらず、多くの男性が彼女に魅力を感じた理由を知りたかったんですよね。
とはいえ、梶井真菜子はすべての取材を拒否していました。
そこで里佳は、料理のレシピを教えてほしいと言って面会にこぎつけます。
しかし、これがきっかけで里佳は梶井真菜子を心酔するようになりました。
なぜなら…。
常識外れな人間は魅力的に感じやすい
どれだけ努力しても上手くいかない里佳とは対照的な存在だったからです。
そもそも、多くの男性が梶井に好意を寄せていたのは、安心感が得られたからでした。
若くて、美人で、スリムな体型の女性は、モテるので、いつ自分から離れていくかわかりません。
しかし、梶井なら心配する必要がありませんよね。
劣等感を抱く必要がなく、頑張らなくても、ありのままの自分を受け入れてくれる…。
そんな自分を飾らなくていい梶井に多くの男性が心を許し、ハマっていったのです。
一方の里佳は、多くの女性と同じようにスリムで美しい自分をキープしようと努力していました。
仕事も出来て、彼氏とも仲良く過ごして…という世間の多くが望んでいる女性像を知らず知らずのうちに目指していたのです。
しかし、梶井は何の努力もせずに里佳よりも多くのものを手に入れていました。
だからこそ、里佳は梶井の言うことに従うようになります。
「バター醤油ご飯を作りなさい」と言われれば、高級なバターを買ってきて、作って食べたり、
「セックスをしたあとにバターラーメンを食べなさい」と言われれば、自分から彼氏をホテルに誘うなど、梶井の言うとおりに行動するようになりました。
こうして里佳は、これまで知らなかった快感を覚えるのですが…。
自分の適量を知ることが幸せへの第一歩
ある出来事がきっかけで、自分にとっての適量が望ましいことを悟ります。
世間の多くの女性が目指している人生でも、梶井のような常識破りの人生でもなく、自分にあった適量を知り、自分らしく生きることが幸せだと気づくんですよね。
なぜ、彼女が適量が大切だと悟ったのかは、実際に本書を読んで確かめてもらうとして、私たちは誰かの意見に左右されがちです。
常識を大切にしたり、常識はずれを目指したり…。
しかし、それでは他人に振りまわされているだけです。
だからこそ、自分にとっての適量を知り、誰よりも自分を大切にする…つまり、適量を知ることが自分らしく生きる秘訣なのです。
それがよくわかる物語でした。
まとめ
今回は、適量を知ることが自分らしく生きる秘訣だとわかる柚月麻子さんの小説『BUTTER』を紹介してきました。
もちろん、木嶋早苗さんの人生が追体験できる物語としても、無性にバターが食べたくなる物語としても楽しめるので、
気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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