webstation plus

(※『BUTTER』表紙より)


 柚木麻子さんの小説『BUTTER』。

 首都圏連続不審死事件をテーマに、なぜ木嶋早苗(作品内では梶井真奈子として登場)に多くの人たちが注目したのかを、その背景と共に描いた小説です。

 読めば自分らしく生きるとはどういうことなのか考えたくなること間違いなし!?

 今回は『BUTTER』のあらすじとおすすめポイントを紹介します。

 『BUTTER』のあらすじ

 交際していた男性が次々と不審な死を遂げたことで逮捕された梶井真奈子。物的な証拠は何ひとつ見つかっていませんでしたが、彼女は無期懲役を言い渡され、控訴審を控えていました。

 そんな梶井に取材をしたいと考えていたのが週刊誌記者の町田里佳です。もちろん、簡単には応じてもらえませんでしたが――。

 里佳の友人・玲子の助言で状況が変わります。「あの時のビーフ・シチューのレシピをぜひ、教えてください」と手紙に書けば会ってくれると言うのです。

「だって、料理好きな女って、レシピを聞かれると喜んで、いろいろと聞かれていないことまで話してしまうものだもん。これは絶対の法則だよ。現に私がそうだし」

 実際、玲子の助言に従って手紙を送ってみると、梶井から面会してもいいという返事が来ました。

 こうして里佳は、梶井と面会するようになります。果たして彼女の運命は!?

 『BUTTER』のおすすめポイント

1. なぜ木嶋早苗が世間から注目されたのかがわかる

 それは、若くも美しくもなく、体重も70キロを超えている梶井真奈子が多くの男性を手玉に取っていたからです。

 多くの女性は、若さと美しさを手に入れようと、痩せようと必死になっていますよね。

 ダイエット本や美容に良いと言われる食べ物などが飛ぶように売れたり、美魔女がもてはやされたりと、誰もが若さと美しさ、体型を維持しようと努力しています。

 ところが、梶井はどれ一つとして持っていませんでした。若くもなく、美人でもなく、スリムでもない。それなのに、多くの男性に言い寄られ、お金を貢いでもらい、優雅な暮らしをしている。一体どうして?

 こうして梶井真菜子は世間に注目されたんですね。多くの女性が幻想を描いていることに気づかされる物語です。

2. 信念を持つことの大切さがわかる

 そんな梶井に面会するようになった里佳は、梶井に魅了されていきます。

 里佳は、痩せて美しい自分をキープしようと努力していました。仕事もできて、彼氏とも仲良く過ごす。そんな世間が望む女性像を知らず知らずのうちに目指していたんですね。

 ところが梶井と出会うことで考えが変わっていきます。彼女は世間が望む女性像と正反対なのに、自分よりも多くのものを手に入れていたからです。

 はじめは取材をするために梶井の言うことを聞いていた里香。「バター醤油ご飯を作りなさい!」と言われれば、高級なバターを買って実際に食べてみました。しかし、その味に驚愕した里香は少しずつ梶井に心を許すようになります。

 その後、何度かこのような体験をした里佳は、梶井の要求に全て従うようになりました。セックスしたあとにバターラーメンを食べろと言われたら、自分から彼氏をホテルに誘ったりします。

 そんな里佳の変貌ぶりを心配した玲子は、こっそり梶井に面会します。しかし、それが原因で――。

 信念を持つ大切さがわかる物語です。

3. 彼女たちが出した結論に感動

 里佳と玲子は梶井に翻弄されますが、最後にある結論にたどり着きました。

 それは、自分の適量を知ること。世間や梶井のような声の大きな人間に流されるのではなく、自分の適量を知り、自分らしく生きることでした。

 ぜひ、実際に読んで自分の適量とは何かを考えてみてください。

 最後に

 柚木麻子さんの小説『BUTTER』。読めば自分らしく生きるとはどういうことなのか考えたくなること間違いなし!?

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

 関連記事

『死神の精度』は暗くて重いテーマを明るく描いた小説

(※『死神の精度』表紙より)  伊坂幸太郎さんの小説『死神の精度』。  「死」をテーマにした物語なので暗くて重い雰囲気になると思っていましたが、読めば明るく楽しい気分になれること間違いなしの小説です。  今回は『死神の精 …

普通って何?村田沙耶香『コンビニ人間』は自分らしく生きる女性を描いた小説

(※『コンビニ人間』表紙より)  2016年に芥川賞を受賞した小説『コンビニ人間』。  普通とは何か?自分らしく生きるとはどういうことか?など、いろいろ考えさせられる物語です。あまりの面白さに一気読みしてしまうこと間違い …

読書は優雅なもの!?東野圭吾『素敵な日本人』は意外性にあふれたミステリー小説

(※『素敵な日本人』表紙より)  短編はお好きですか。  私は小説に驚きや感動、励ましのようなものを求めているので、物語の世界観にどっぷり浸れて、イッキ読みできる長編を好んでいました。  今もその思いは変わりませんが、東 …

盗人にもモラルがあった!?池波正太郎『鬼平犯科帳(1)』は正義と悪がごちゃ混ぜになった小説

(※『決定版 鬼平犯科帳(1)』表紙より)  池波正太郎さんの小説『鬼平犯科帳(1)』。  大きくみると鬼平が悪者を退治するという構成の物語ですが、盗人にもモラルがある者やそうでない者がおり、盗人同士でも闘いを繰り広げる …

本当の恋をしていますか?知念実希人『崩れる脳を抱きしめて』は心揺さぶられる恋愛ミステリー小説

(※『崩れる脳を抱きしめて』表紙より)  知念実希人さんの小説『崩れる脳を抱きしめて』。  研修医の碓氷蒼馬(うすい そうま)が、脳に爆弾を抱える弓狩環(ゆがり たまき)と出会い、恋に落ち、そして彼女の死の謎に迫る恋愛ミ …

病弱でも強くなれる!?畠中恵『しゃばけ』は妖怪が活躍するミステリー小説

(※『しゃばけ』表紙より)  10年ほど前に買った畠中恵さんの小説『しゃばけ』。  久しぶりに読みましたが、病弱なのに難題に立ち向かう若だんなの姿に感動しました。読めば自分も頑張ろうと思えること間違いなし!?  今回は『 …

ちょっと切ない物語!?米澤穂信『氷菓』は高校が舞台の青春ミステリー小説

(※『氷菓』表紙より)  米澤穂信さんの小説『氷菓』。  高校に入学したばかりの4人が古典部に入部し、日常のちょっとした謎を解いていく青春ミステリー小説です。読めば、少し切ない気持ちになること間違いなし!?  今回は『氷 …

悩みにどう向き合う?畠中恵『おまけのこ』は優しさと哀しさに満ち溢れた小説

(※『おまけのこ』表紙より)  畠中恵さんの小説『おまけのこ』。  しゃばけシリーズ第4弾の本作は、若だんなや幼馴染の栄吉、お雛ちゃんたちが自分の悩みにゆるく向き合う時代小説です。  読めば彼らの優しさと哀しさに心動かさ …

仕事に人生をかけてる?塩田武士『騙し絵の牙』は大泉洋をあてがきした小説

(※『騙し絵の牙』表紙より)  仕事に人生をかけてますか?  私はかけていません。仕事の悩みは星の数ほどありますが、どれも「叱られたくない!」というネガティブな感情からスタートしています。  「成し遂げたいことがある」な …

『農ガール、農ライフ』は厳しい現実に立ち向かう勇気をくれる小説

(※『農ガール、農ライフ』表紙より)  垣谷美雨さんの小説『農ガール、農ライフ』。  「今の仕事がキツイから農業でも始めようかなぁ」「退職後に農業でも始められたらいいなぁ」と漠然と考えている人たちに、厳しい現実を教えてく …