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 私たちは誰もがまわりの影響を色濃く受けていますよね。

 たとえば、今勤めている会社が大規模なリストラを断行するなんて噂が流れたら、誰もがじっとしていないでしょう。

 転職先を探したり、リストラ対象に自分が入ってないか上司に確認したりと、あれこれ動くはずです。

 もちろん、こうした行動が悪いわけではありませんが、少し視点を変えてみると、まったく違った風景が浮かび上がってきます。

 幕末も多くの人たちが揺れ動いていた

 物語の舞台は幕末の江戸城。勝海舟と西郷隆盛の間で江戸城は不戦開城することが取り決められていましたが、その約束とは無関係に、多くの人たちは様々な思いを巡らせていました。

 たとえば、徳川慶喜を担ぎ上げて、新政府の樹立を阻止しようとする彰義隊や、幕府を武力で叩き潰す機会を虎視眈々と狙う新政府、このどちらにも属さずに、金目のものを売りさばいて自由気ままに生きようとする旗本など、多くの人が自分の利益を考えて行動していたのです。

 一方で自分の利益を度外視して行動する人たちもいました。勝海舟だけでなく、尾張徳川の部下、加倉井隼人もそのひとり。彼は大した役職に就いていませんでしたが、江戸城明け渡しに先んずる官軍の、俄か隊長を命じられました。

 要は開城の勅使が向かう前の斥候です。城内に問題があった場合、殺されてもいい捨て駒として選ばれたのです。

 このように、自分の利益になろうがなるまいが誰もが時代の流れに翻弄されていたわけですが…。

 まわりに影響されることなく自分を貫く主人公

 この物語の主人公である的矢六兵衛は、まるで何事もなかったかのように自分の持ち場を離れませんでした。

 開城談判が成立した途端に、梃子でも動かなくなり、御所院番所の宿直部屋に座り続けます。それだけでなく、喋りかけても応えてくれません。

 そんな六兵衛を説得しようと、勝海舟や加倉井隼人、大村益次郎や木戸孝允、さらには将軍まで彼と対面しますが、誰一人として六兵衛を説得できませんでした。

 むしろ、説得する側の弱い心が浮き彫りになっていく一方です。そんな彼らの姿を見ていると…。

 自分を貫く人には誰も敵わない

 ように思えてきます。

 冒頭に紹介したように、私たちはまわりの影響を色濃く受けて生きていますが、六兵衛のように自分の信念を貫き、まわりを左右していく強さを持つことが、変化が激しい時代にあっても自分らしく生きる秘訣なのかもしれません。

 浅田次郎さんの小説『黒書院の六兵衛』。気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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