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 ディープラーニングなどの機械学習を理解するには、微分の概念を理解しておく必要があります。そして、微分を理解するには二項定理を理解しておく必要があるんですよね。

 そこで今回は、『数学ガールの秘密ノート/場合の数』を参考に、二項定理について紹介します。

 導関数の公式を覚えるのは簡単?

 導関数の公式を覚えている人は多いのではないでしょうか。具体的には次の公式です。

$$f(x) = x^n → f’ (x) = nx^{n-1}$$

 実際、多くの高校生がこの公式を覚えていますが、微分の意味は理解していません。公式を覚えて機械的に解くのは簡単なんですよね。

 そこで導関数の公式を導くためにも、まずは二項定理を理解しましょう。

 まずは「順列」と「組み合わせ」のおさらい

 二項定理について説明する前に、まずは「順列」のおさらいです。

 順列とは、たとえばA, B, C, D, Eの5つから3つを選ぶ場合で、かつ順番を考慮するものです。「A→B→C」と「C→B→A」は別ものと考えます。

 このとき、最初の1つ目はAからEの5通り、2つ目は1つ目に選んだものを除いた4通り、3つ目は1つ目と2つ目に選んだものを除いた3通りになるので、

$$_5 P _3 = 5 \times 4 \times 3 = 60$$

 になります。

 そして、順列で順番を考慮しないものを「組み合わせ」と言い、先ほどの場合では「A→B→C」と「C→B→A」を同じものと考えます。

 そのため、先ほど計算した順列\(_5 P _3\)から、重複する順列「3つから3つを選ぶ順列」を除外する必要があります。その結果、

$$_5 C _3 = \frac{_5 P _3}{_3 P _3} = \frac{5 \times 4 \times 3}{3 \times 2 \times 1} = 10$$

 となるんですよね。ちなみに、\(_3 P _3\)は\(3!\)と表すこともできます。

 この組み合わせを一般化すると、異なる\(n\)個から\(r\)個を選ぶ組み合わせは、

$$_n C _r = \frac{_n P _r}{r!} = \frac{n \times (n-1) \times (n-2) \times \cdots \times (n-r+1)}{r \times (r-1) \times (r-2) \times \cdots \times 1}$$

 と求めることができます。これで組み合わせまでおさらいすることができました。

 二項定理とは?

 これでようやく二項定理が理解できる土台が整いました。突然ですが、ここで\((a+b)^3\)の展開公式について考えてみましょう。

$$(a+b)^3 = (a+b)(a+b)(a+b) = a^3 + 3a^2b + 3ab^2+b^3$$

 と計算することもできますが、ここでは「\(3a^2b\)」の係数が3になる理由を場合の数として考えてみたいと思います。

 たとえば、「\(a^2b\)」の項がつくられるのは、「\((a+b)(a+b)(a+b)\)」で\(a\)が2つ、\(b\)が1つ選ばれる場合ですよね。

 組み合わせ問題として考えると、3つの\((a+b)\)から\(b\)が1つ選ばれる組み合わせを求めることになるので、

$$_3 C _1 = 3$$

 と求めることができます。こうして求めた係数を二項係数と言い、一般化すると、次のようになります。

$$(a+b)^nのa^{n-k}b^kの係数は_n C _k$$

 さらに、この係数を組み合わせて\((a+b)^n\)を展開したものを二項定理と言い、次の式であらわせます。

$$(a+b)^n=_n C _0a^n+_n C _1a^{n-1}b+_n C _2a^{n-2}b^2+\cdots+_n C _ka^{n-k}b^k+\cdots+_n C _nb^n$$

 これで二項定理まで理解することができました。

 最後に

 今回は、導関数の公式を求めるために必要な二項定理について紹介してきました。

 これでようやく微分を理解するための準備が整ったので、引き続き微分について勉強していきましょう。

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