webstation plus

 他人と距離をとって生きていませんか?

 私はどちらかと言うと、お節介なところがあるので、他人の領域に踏み込んでしまうところがありますが、そんな性格で良かったのかなと思える物語がありました。

 三上延さんの小説『ビブリア古書堂の事件手帖2』です。何もせずに見守っているだけでは、今ある関係もなくなってしまうかもしれないんですよね。

 ビブリア古書堂に人間関係の問題が次々と持ち込まれる

 では、あらすじから。

 物語の舞台はビブリア古書堂。前作でビブリア古書堂を辞めた大輔でしたが、その後、栞子さんと仲直りをし、再び店員として働き出しました。

 そんな彼らのもとに小菅奈緒が相談を持ち込みます。彼女の妹が書いた読書感想文がきっかけで、読む本を親にチェックされるようになったと言うのです。

 小菅の妹が読書感想文に書いたのは、アントニイ・バージェスの『時計じかけのオレンジ』という小説で、悪夢みたいな救いようのない物語でした。

 しかし、彼女が書いた感想には、「誰かに押し付けられて良い人間になるよりも、悪いことをしている方が人間らしいかもしれない」と書かれていたので、学校の先生から親に注意が入り、親がショックを受けたのです。

 それで小菅の親が読む本をチェックするようになったのですが…。

 この話を聞いた栞子さんは、「この読書感想文を書いた人は、本当の意味で『時計じかけのオレンジ』を読んでいません」と言います。なぜなら…。

 大輔の元カノや栞子さんの母親の話題も登場

 この続きは実際に本書を読んでもらうとして、『ビブリア古書堂の事件手帖2』には、大輔の元カノや栞子さんのお母さんの話題も登場します。

 高校の頃に栞子さんをたまたま見かけた大輔は、栞子さんに一目惚れしますが、同級生の高坂晶穂と長い時間を共に過ごすようになり、付き合うようになりました。

 大学生になってからは、疎遠になって別れてしまいましたが、久しぶりに再会した晶穂から亡くなった父の遺本を買い取って欲しいと言われます。

 そこで大輔は、栞子さんと一緒に晶穂の実家に行くことになるのですが、そこで大輔は晶穂がどんな暮らしをしていたのか全く知らなかったことを痛感しました。

 大輔は晶穂と距離をとって付き合っていたんですよね。

 だからこそ、大輔は栞子さんとは距離を縮めたいと思い、タブーになっていた彼女のお母さんの話題を持ち出しますが…。

 人との距離を縮めるには一歩踏み出す勇気が必要

 栞子さんから「母の話はしたくありません」と言われます。それだけでなく、「私は誰とも一生結婚するつもりはありません」と言われるんですよね。

 それでも大輔は…。

 三上延さんの小説『ビブリア古書堂の事件手帖2』は、そんな彼らの恋の行方が気になる物語ですが、それだけでなく人との距離を縮めるには一歩踏み出す勇気が必要だと教えてくれる物語でもあります。

 もちろん、ミステリーとしても、恋愛小説としても面白いので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

 関連記事

三上延『ビブリア古書堂の事件手帖6』感想/自分の欲望を満たすために他人を犠牲にできますか?

 自分の欲望を満たすために他人を犠牲にできますか?  私はそれほど欲望がないので他人を犠牲にできませんが、三上延さんの小説『ビブリア古書堂の事件手帖6』に登場する多くの人たちは自分の欲望のために行動していました。  それ …

小川糸『キラキラ共和国』は嫌な過去も意味ある過去へと変えられることがわかる物語

 嫌な過去はありませんか?  私は結婚した直後がとてもツラかったので、ときどき嫌な過去として思い出すことがありますが…。  子供ができて、幸せな家庭が築けた今では、その時間も愛おしく思えるようになりました。  小川糸さん …

原田マハ『小説 星守る犬』感想/夫婦円満の秘訣とは?

愛とは相手に変わることを要求せず、相手をありのままに受け入れることだ。  とは、イタリアの劇作家、ディエゴ・ファブリの言葉ですが、私たちはどうしても相手に変わることを求めてしまいますよね。 「なぜ、そんなキツイことを言う …

有川浩『図書館革命』感想/革命は一人ひとりの自覚から始まる

 気がつけば新しい法律が決まっていることってありますよね。  司法試験の制度が変わったり、保育料が無償化されたり、消費税が上がったりと、私たちの生活に直結する内容が、いつの間にか決まっていることがあります。  もちろん、 …

村山早紀『星をつなぐ手』は今すぐ本屋さんで本を買いたくなる物語

 本屋さんで本を買っていますか?  私はネットで買ったり、図書館で借りたりすることが多いのですが、村山早紀さんの小説『星をつなぐ手』を読んで、これからは出来るだけ本屋さんで買おうと思いました。  一人でも多くの人が本屋さ …

読書が好きじゃなくても本が読みたくなる小説ーpart8

(※『ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~』表紙より)  読書していますか?  『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズ8冊目は栞子さんと大輔が結婚した後の世界が描かれている番外編。  これまで登場してきた人 …

額賀澪『ウズタマ』/子供にとっていちばん大切な人は誰?

 子供にとって一番大切な人は両親だと言われていますよね。しかし、その両親が子供とうまくコミュニケーションが取れてなかったとしたら…。子供にとって一番大切な人はあっという間に変わってしまうかもしれません。  もし、親という …

病弱でも強くなれる!?畠中恵『しゃばけ』は妖怪が活躍するミステリー小説

(※『しゃばけ』表紙より)  10年ほど前に買った畠中恵さんの小説『しゃばけ』。  久しぶりに読みましたが、病弱なのに難題に立ち向かう若だんなの姿に感動しました。読めば自分も頑張ろうと思えること間違いなし!?  今回は『 …

他人に勝つことよりも自分に負けないことが大切な理由

(※『道誉なり』表紙より)  私たちが住む世界には、権力やお金、名誉などをかけた闘いが星の数ほどあります。  身近なところで言えば、会社での出世争いや住んでいる場所での格付け争い、あるいはSNS上での知名度争いなどがそう …

今村夏子『むらさきのスカートの女』感想/自分の目を通して見たものが全てではない

 自分の目を通して見たものや感じたことが全てだと思っていませんか?  もちろん、誰にでもそういうところはありますが、それが行き過ぎると、今村夏子さんの小説『むらさきのスカートの女』の主人公のようになってしまいます。  あ …