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 戦争の物語を読むのはツライですよね。

 もちろん、今回紹介する小説『ベルリンは晴れているか』も残酷なシーンが多く、読むのがツラくなりますが、読み終わってみると、ツラさよりも「戦争って誰が得するんだろう」という思いが強くなりました。

 もっと言えば、戦争で勝っても負けても、互いにツライ思いをするだけじゃないかと考えるようになったんですよね。

 悲劇は戦争が終わった後も続く

 物語の主人公はドイツ人の女性・アウグステ。彼女の両親は、共産主義者で、さらにポーランド人の女の子を匿っていたので、戦争中に処刑されました。

 それでも一人で何とか生き延びたアウグステでしたが、彼女が終戦後に見た世界は異常でした。

 勝利国の兵士が敗戦国の女性を襲うのは当たり前です。アウグステもロシア兵に犯されたことがあり、子供が出来なかったことに安堵していました。

 それだけでなく、至る所で発砲の音が鳴り響いています。道端に死体が転がっているのは普通のことで、いつ自分がその立場になるかわかりません。

 また食事も酷いものでした。動物園から逃げ出したワニやペリカンを捕まえて料理したり、むしろそんな食事にありつけるのは良い方で、使い捨てられたコンドームが落ちている川の水で茹でたカエルを食べたりと、想像するだけで吐きそうになります。

 しかし、何よりも酷いのは…。

 異常を当たり前の日常に変えた思想統制

 思想統制でした。戦争中は特に酷く、ヒトラーの言動に従い、多くの共産主義者とユダヤ人が迫害されました。

 アウグステが中学生だった頃、彼女は学校で人種優生学を教えられました。ユダヤ人の少女を教室に連れてきて、皆の前に立たせ、ユダヤ人は劣っているから絶滅すべきだと先生が教えていたのです。

 本も検閲されていました。戦争は怖くて悲惨だとか、自由な人生を自分の足で進もうだとか、国境なく平等に人を愛そうだとか、そういった内容はすべて書店や図書館から撤去され、広場で燃やされました。

 シンデレラも王子様との愛ではなく、純血同士だから再び会えるという結末に変更されたのです。

 こうしてユダヤ人と共産主義者を迫害することを教え込まれた人たちは、大きく3種類に分かれました。

 ひとつ目は盲目に従う人たち。二つ目は利害関係で従う人たち。三つ目は反発する人たち。

 なかでも盲目に従う人たちは恐ろしく、迫害することに罪悪感をまったく感じていませんでした。

 その代表者であるドイツ兵士達は、ユダヤ人を強制連行する際に、歩くのが遅い老人を何のためらいもなく殴り、殺します。

 それだけでなく、赤ん坊が泣けば、鼻と口を押さえて息をできなくし、そのことに腹を立てた母親を夫の目の前で裸にして射ち殺し、そのあとに夫まで射殺します。

 戦争が終わった後は、このドイツ兵がロシア兵やアメリカ兵といった戦勝国の兵士に変わっただけです。

 このような事実を眺めていると…。

 戦争は誰ひとり幸せにしない

 戦争は勝者も敗者も誰一人として幸せにしないように思えてきます。

 敗戦国の人たちが苦しいだけでなく、戦勝国側の人たちも、異常なことを当たり前だと思い込み、他人を従わせることでしか幸せを感じられないからです。

 このように多くの人を不幸に陥れる戦争は断じてすべきではないと思うんですよね。

 もちろん、頭の中では誰もが戦争はダメだとわかっているはずです。しかし、その考えを心の底から納得できるようにするには、こういった物語が必要なのかもしれません。

 深緑野分さんの小説『ベルリンは晴れているか』。気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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