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 最近、虐待のニュースが多いですよね。それは血の繋がりはあっても、子どもとの関係が築けない、大人になりきれていない親が増えているからだと思います。

 しかし、そんな親に「しっかりしろ!」と叱っても無駄ですよね。それなら、面倒見が良い人を見つけて任せたほうが上手くいくのでは?と思うようになりました。

 そんな考えにさせてくれた小説が瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』。これからの日本に必要な視点を与えてくれる物語です。

 主人公は血のつながりのない男性と楽しく暮らす女子高生

 物語の主人公は、血のつながりのない男性と楽しく暮らす女子高生の優子ちゃん。

 彼女は両親に捨てられた…というわけではありませんが、巡りめぐって血のつながりのない森宮さんという面倒見のいい男性と二人で暮らしていました。

 しかし、そのような境遇にも関わらず、優子ちゃんは次のような発言を繰り返すんですよね。

「森宮さん、次に結婚するとしたら、意地悪な人としてくれないかな」
「いつもいい人に囲まれてるっていうのも、たいへんなんだよね。次の母親はちょっとぐらい悪い人のほうが何かと便利かなって」

 それだけ優子ちゃんは森宮さんと幸せに暮らしていたのですが、それだけではありませんでした。優子ちゃんは人よりもタフな性格をしていたからです。

 彼女は、あることがきっかけでイジメにあいます。同級生全員から無視されるようになりますが、まったく動じませんでした。なぜなら…。

 変わりものの森宮さんに救われた優子ちゃん

 本当の両親にも興味を持ってもらえなかったからです。

 本書では、優子ちゃん視点で良いように描かれていますが、本当の父は、ブラジルに出向するときに優子ちゃんを連れて行かず、父の再婚相手である梨花さんは、優子ちゃんのことよりも自分の想いを優先させていました。

 梨花さんが次に再婚した泉ヶ原さんは、優子ちゃんとコミュニケーションを取ろうとさえしませんでした。

 ただ、梨花さんのその次の再婚相手である森宮さんだけが彼女に興味をもって接してくれました。梨花さんは優子ちゃんを置いて出ていきましたが…。

 だからこそ、優子ちゃんはいじめにあっても、「友達はそれほど大事なものじゃない。優先順位をつけるなら勉強の方が大事だ」と受験勉強に励めたのだと思います。

 身近な人から興味をもってもらえなかった彼女は、自分にとって大事なことが何かを考える習慣を持っていたからです。

 また、優子ちゃんはこれまで誰からも愛されませんでしたが、今は愛情を注いでくれる森宮さんと暮らしていたからこそ安定できたのだと思います。

 そんな優子ちゃんの暮らしを眺めていると…。

 虐待を解決する方法は森宮さんを見つけること

 最近、虐待のニュースが多いですよね。それは血の繋がりはあっても、子どもとの人間関係が築けない、大人になりきれていない親が増えているからです。

 しかし、そんな親に「しっかりしろ!」と叱っても無駄ですよね。それなら、森宮さんのような面倒見が良い人を見つけ、預けた方がうまくいくのでは?と考えるようになりました。

 瀬尾まいこさんの小説『そして、バトンは渡された』。これからの日本に必要な視点を与えてくれる物語なので、おすすめです。

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