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「近い将来、10人中9人は、今とは違う仕事をしているだろう」

 とは、グーグルの創業者であるラリー・ペイジの言葉ですが、彼はAIの進化によって、現在の仕事のほとんどがAIとロボットに取って代わられると断言しています。

 では、私たちはどうすればいいのでしょうか。黙ってロボットに仕事を奪われるしかないのでしょうか。

 銀行の不祥事を担当する主人公

 物語の舞台は大手銀行のひとつである帝都銀行。主人公の指宿修平は、帝都銀行の「特命担当」という組織に所属し、不祥事を一手に引き受けていました。

 たとえば、第一話『漏洩』では、帝都銀行が厳重管理している「決算書と格付けリスト」が漏洩していることがわかります。「決算書と格付けリストを買わないか?」と匿名の電話が入ったからです。

 指宿は、匿名の相手が誰であるかを絞り込み、マスコミに情報が流れないように動きをかけていきます。

 また、第三話『官能銀行』では、帝都銀行の女性社員がアダルトビデオに出演していると週刊誌に掲載されました。該当しそうな社員をリストアップしたところ1000人以上も対象者が見つかります。

 この中からどうやってAV女優を見つけ出すのか…。これが指宿に与えられた仕事です。

 他にも、第五話『ストーカー』では、融資担当の女性社員がストーカーの被害を受けていることがわかります。無言電話や追跡だけでなく、家のなかにまで侵入された形跡がありました。

 このストーカーを捕まえることが指宿の仕事ですが、これらの仕事はAIやロボットに取って代わられることはありません。

 なぜなら…。

 非定型業務は複雑な処理で成り立っている

 個別の不祥事に対応するような「非定型業務」は、自分の判断や思考力を使って進める必要があるため、AIやロボットに置き換えるのが難しいからです。

 AIは届いたメールが迷惑メールかどうかを判別したり、写真に写っているのが犬や猫かを判別したり、あらかじめ人から与えられたデータから、分類するルールを構築するのは得意ですが…。

 0から1を生み出すのは苦手です。あくまでも人がデータを与えたり、情報を与えたりする必要があります。

 また、AIには正解がわかりません。

 だからこそ、私たち人間は、指宿のように複雑に絡み合った問題を解決する必要があるのですが…。

 男女の区別なく非定型業務に挑戦していこう

 もちろん、男性に限った話ではありません。女性も同じです。

 むしろ、物語のもう一人の主人公・唐木怜のように、女性の方が非定型業務に対応する力があるのかもしれません。

 どちらにしても、これから私たち人間に求められる仕事は、指宿や唐木が対応してきた不祥事のように、複雑に絡み合った問題を解決する仕事です。

 決まりきった定型業務は、AIやロボットに任せておけばいいからです。

 そこで、池井戸潤さんの小説『銀行総務特命』を読んで「非定型業務」を仮想体験してみてはどうでしょうか。

 そうすれば、AIやロボットに取って代わられない業務がどのようなものかわかるだけでなく、きっと「非定型業務」に挑戦したいと思えますよ。

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