webstation plus

drone_01

 グーグルの創業者であり、現CEOのラリー・ペイジは、人口知能の急激な発達によって、現在私たちが担当している仕事のほとんどはロボットがやることになるという。加えて次のように断言している。

 「近い将来、10人中9人は、今とは違う仕事をしているだろう」

 では、私たちはどうすればいいのか。黙ってロボットに仕事を奪われるしかないのだろうか。そんなことはない。結論からいえば、ロボットには対応しにくい仕事、すなわち「非定型業務」をやればいいのである。ちなみに、「非定型業務」とは、自分の判断や思考力を使って進める仕事のこと。

 小説『銀行総務特命』の主人公・指宿修平も「非定型業務」を担当しているひとり。彼は大手・帝都銀行の不祥事を一手に引き受ける「特命担当」という組織に所属していた。彼のもとには連日のように不祥事が舞い込んでくる。

 たとえば、第一話『漏洩』では、帝都銀行が厳重管理しているはずの「決算書と格付けリスト」が漏洩していることがわかる。「決算書と格付けリストを買わないか?」と匿名の電話が入ったからだ。指宿は、匿名の相手が誰であるかを絞り込み、マスコミに情報が流れないように動きをかけていく。

 また、第三話『官能銀行』では、帝都銀行の女性社員がアダルトビデオにでると週刊誌に掲載されてしまう。該当しそうな社員をリストアップしたところ1000人以上もいた。この中からどうやってAV女優を見つけるのか。それが指宿に与えられた仕事だ。

 他にも、第五話『ストーカー』では、融資担当の女性社員がストーカーの被害を受けていることが判明。無言電話や追跡だけでなく、家のなかにまで侵入された形跡があるという。このストーカーを捕まえることが指宿の仕事だ。

 このように、指宿は、マニュアルに従えば誰もが処理できる仕事、すなわち「定型業務」をしていない。自分の判断や思考力を使って進める仕事ばかりを担当している。だから、彼の仕事はこれから先もロボットに奪われることはないだろう。

 つまり、これから私たち人間に求められる仕事とは、指宿のように複雑に絡み合った問題を解決する仕事である。決まりきった仕事はすべてロボットに任せておけばいいからだ。だから、本書を読んで「非定型業務」の面白さを味わってみてはどうだろうか。そうすれば、ロボットにとって代わられない仕事がどういう仕事なのかわかるだけでなく、非定型業務に挑戦したいと思えるようになるだろう。

 関連記事

タイトルに込められた真意とは?/山本兼一『利休にたずねよ』

 小説『利休にたずねよ』には、大きな謎が三つある。  ひとつは、「利休はなぜ美の頂点に君臨することができたのか」。当時、茶の湯には人を殺してでも手に入れたいほどの麗しさがあり、道具ばかりでなく、点前の所作にもそれほどの美 …

モテる女性に共通している特徴とは?/池井戸潤『不祥事』

 小説やドラマを観ていると、「本当に素敵な人だなぁ…」と心から惚れてしまう人に出会うことがあります。  たとえば、ドラマ『トリック』に出演されていた仲間由紀恵さん。本当にキレイな方なのに面白い。もちろん、ドラマの設定上「 …

今の生き方でどれくらい生きるつもり?/『終末のフール』感想

 「才能もないのに努力するのは時間のムダだ」とか、「新しいことを始めるよりも、今やっている何かを諦めることが大切だ」っていう人いますよね。実は、こういった言葉の背後には、「私たちはいつか死ぬ」という当たり前の事実が隠され …

過去の自分を受け入れたくなる小説/『コーヒーが冷めないうちに』

 「4回泣ける」と評判の『コーヒーが冷めないうちに』を読みました。残念ながら、Amazonのカスタマーレビューに書かれている通りツッコミどころ満載の小説でしたが、設定が面白くて最後まで一気に読んでしまいました。  一見拙 …

家族とは何か/森見登美彦『有頂天家族』

 「家族」ってなんだろう。血がつながった人たちの集まりのことだろうか。それとも、一緒に暮らしている人たちのことだろうか。あるいは、愛し合っている人たちの集まりのことだろうか。  たぶん、どれも正しくて、どれも間違っている …

信じる力の恐ろしさを教えてくれる小説『リア王』

 「プラシーボ効果」をご存知でしょうか。  別名、偽薬効果とも呼ばれており、たとえば夜眠れないと訴える患者に、医師が睡眠薬と偽ってビタミン剤を処方すると、患者は薬の効果を信じて安眠できるようになります。  他にも、「もっ …

「存在意義がない人」など一人もいない/東野圭吾『ラプラスの魔女』

 人間にとって大切なのは、この世に何年生きているかということではない。この世でどれだけの価値のあることをするかである。 (オー・ヘンリー)  たしかに、「価値」を生み出すことは大切だ。私たちが仕事をするのも「価値を生み出 …

日本人にとってもはや戦争は他人事なの?/月村了衛『土漠の花』

 私がまだ子どもだった頃。終戦記念日にテレビをつけると、ほとんどのチャネルで戦争番組が放送されていた。「アニメやお笑いがみたい」と思っても、その日は諦めるしかなかったほどだ。  ところが、今では戦争番組そのものが減ってい …

あなたの人生がつまらない理由/下村敦史『生還者』

 コカイン疑惑報道を受けて、芸能界から引退することを決められた成宮寛貴さん。彼は、母子家庭で育ち、中学生のときに母親を亡くした後、弟の面倒をみるなど苦労を重ねた末に芸能界で活躍されていましたが、写真週刊誌「FRIDAY」 …

「光」あるところには必ず「影」が存在する/百田尚樹『影法師』

 「光が多いところでは、影も強くなる」――と、ゲーテがいったように、光あるところには必ず影がつきまとう。しかし、私たちは光だけを追い求め、影の存在を否定してしまいがちだ。  たとえば、宝くじを買ったり、株やFXで一儲けし …