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(※『AX アックス』表紙より)


 家族のことを本気で想っていますか。

 私は家族のことを本気で想っていると自負していたのですが、伊坂幸太郎さんの小説『AX アックス』を読んで少し考えが変わりました。家族思いの殺し屋に衝撃を受けたからです。

 今回は殺し屋シリーズ第三弾『AX アックス』のあらすじとおすすめポイントを紹介しながら、家族のことを想うとはどういうことか考えてみたいと思います。

 『AX アックス』のあらすじ(『AX』)

 妻と高校生の息子と暮らす兜。彼は、普段は文房具メーカーの営業をしていましたが、超一流の殺し屋としての裏の顔を持っていました。

 しかし、妻にはまったく頭が上がりません。息子の克已も呆れるほどの怖れっぷりです。

 そんな兜に殺しの依頼が舞い込みます。しかし、その日は息子の進路相談と重なっていました。

 妻の機嫌が悪くなる前に兜は殺しを行いますが、なぜか美人教師との関係を妻に疑われてしまいます。

 兜はこの困難をどう乗り越えるのか!?

 『AX アックス』のおすすめポイント

1. 最強の殺し屋が妻に頭が上がらないという設定が面白い

 これまでの殺し屋シリーズは、怒りが湧いてくるような理不尽な物語が語られてきました。しかし、『AX アックス』は違います。

 最強の殺し屋なのに妻に頭が上がらないという設定の面白さが物語の至るところに散りばめられています。

 たとえば、兜は夜食にカップラーメンを食べるなんてありえないと言います。なぜなら、

「包装しているビニールを破る音、蓋を開ける音、お湯を入れる音、深夜に食べるにはあまりにもうるさい」

 その音に気づかれて妻が起きたら、「うるさくて、まるで眠れなかった」と指摘され息苦しくなると言うのです。だから夜食はソーセージだけ。

 他にも、「今日の夕食、トンカツでいい?」と聞かれてトンカツを食べるつもりになっていても、「夕食、トンカツじゃなくてもう少しあっさりしたものでいいかな。そうめんとか」と聞かれると、

「俺も、そうめんくらいのほうがいいように思っていたところなんだ」

 と答えるほど妻に頭が上がりません。そんな兜が超一流の殺し屋という設定に物語の面白さがあります。

2. シリーズ初!?心温まる短編集

 『AX』はこれまでの殺し屋シリーズに比べて怒りが湧いてこないだけでなく、伊坂幸太郎さんお得意の短編集と見せかけた長編小説の構成をとっています。

 全5章で構成されているのですが、どれも心温まる物語ばかりなんですよね。

 なかでもおすすめは『Crayon』『EXIT』『FINE』。

 それぞれ簡単に紹介します。

『Crayon』

 ボルダリングを始めた兜。そこで彼は松田という男性に出会いました。

 はじめは殺し屋かもしれないと警戒していた兜でしたが、松田も妻に気を使って生きていることがわかり、一気に距離が縮まります。

 しかし、松田は兜とは違い、妻に不満を持っていました。妻と言い合いになったというのです。

 そんな彼の癒しは幼い頃に娘が描いた絵。この想いを共有したいと考えた松田は兜を飲みに誘いますが――。

 最後に優しい気持ちになれる物語です。

『EXIT』

 小太りで四角い顔をしている奈野村。彼は半年前から百貨店で警備員の仕事をするようになりました。

 文房具メーカーの営業をしている兜は、その百貨店で彼と知り合い、仲良くなります。

 しかし、奈野村の息子が警備の仕事を見学したいと言ったことがきっかけで思わぬ出来事が。

 兜は奈野村と友達でいられるのか!?

『FINE』

 兜が死んでしばらく経った後の話。兜の息子・克已は父の死を不審に思っていました。

 なぜなら、いつだって母に怯えていた父が、母の機嫌を損なうような自殺を選ぶはずがないと考えていたからです。

 そんなとき、母のもとに怪しい男性が訪ねてきます。その男性に話を聞きに行った克已は、父が死の直前にある病院に通っていたことを知ります。

 それを手がかりに父の行動を追いかけていくと――。

 最後に涙が溢れ出てくる物語です。

3. 家族想いの殺し屋に共感

 これまで紹介してきたように、兜は超一流の殺し屋でしたが、何よりも家族のことを考えていました。もちろん、妻が一番です。

 では、なぜ兜はそう考えるようになったのでしょうか。

 この理由が最後に明かされるのですが、それを読んだら涙が止まりませんでした。彼は自分が犠牲になっても妻と子どもを守る決意をしていたのです。

 これこそが家族を想う気持ち。ぜひ実際に読んで、兜の気持ちに涙してください。

 最後に

 伊坂幸太郎さんの小説『AX アックス』。読めば、家族想いの殺し屋に泣いたり笑ったりすること間違いなし!?

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

 ※殺し屋シリーズの紹介はこちら。

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