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 未来が予測できて人の言葉を話すカカシが登場する小説。それが伊坂幸太郎さんのデビュー作『オーデュボンの祈り』です。

 現実にはあり得ない設定なのに、いつの間にか夢中になって、しかも喋るカカシは実在するのかも…なんて思えてくる不思議な物語。伊坂ワールドにハマります。

 解きたくなる謎が次々と提示される

 この物語最大の謎は、未来予測ができるカカシがなぜ殺されたのか。

 未来が予測できるなら、それを防ぐこともできたはずなのに、なぜカカシは一言も話さずに殺されたのか…すごく気になりますよね。

 『オーデュボンの祈り』では、このような謎が次々と提示され、解き明かされていきます。

 たとえば、なぜ美少女の若葉はいつも轟の家の前で寝転んでいるのか、なぜ画家の園山は嘘しか言わなくなったのか、なぜカカシは話せるようになったのか、など気になる謎が盛りだくさん。

 しかも、その答えがどれも納得できるものばかりなので、想像力や思考力が鍛えらるんですよね。

 それだけでなく…。

 問題があることは、それほど悪いことじゃない

 登場人物の多くが何らかの問題を抱えています。

 たとえば、主人公の伊藤とすぐに仲良くなった日比野は、他人の気持ちを理解する力がなく、余計なことばかり話しています。

 画家の園山は妻が殺されてから嘘しか言わなくなり、美人姉妹の佳代子と希世子は他人を見下し、足が悪い田中はその苦労のせいで老けて見えました。

 市場で売り子をしているウサギは太り過ぎて一歩も動けなくなり、美青年の桜はうるさい人間がいれば構わず発砲します。

 そんな一癖も二癖もある彼らの姿を見ていると、問題を抱えていることが、それほど悪くないことのように思えてくるんですよね。

 自分の悩みがちっぽけに思えるほど彼らの魅力にハマります。

 心の底からムカつく人間が物語を盛り上げる

 それは警察官の城山のこと。彼はカップルが歩いているとわざと片方にぶつかって、もう片方が車に轢かれるのを楽しむような人間でした。

 「私は大好きな人をなぜ殺してしまったのだろう…」と後悔する姿を見るのが楽しくて仕方がない極悪人です。

 そんな城山が次に目をつけたのが、伊藤の元彼女。城山は警察官という立場を利用して浮浪者に彼女を襲わせようとします。

 …と、ほんと心の底からムカつく奴ですが、彼がいるからこそ物語が盛り上がるんですよね。

 現実にもムカつく人は大勢いますが、疎ましくて仕方がない彼らの存在が私たちの人生を盛り上げてくれるのかもしれません。

 ◆

 伊坂幸太郎さんのデビュー作『オーデュボンの祈り』。読めば、常識だと思い込んでいることを見直したくなる小説です。それだけでなく、少しは想像力や思考力が鍛えられるかもしれませんよ。

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