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(※『オーデュボンの祈り』表紙より)


 常識を疑って生きていますか?

 「考える力を鍛えるには常識を疑え」と多くの人が言うように、新しいアイデアを生み出すには常識を疑う力が不可欠です。

 しかし、仕事や家事・育児などに追われていると、常識を疑う余裕なんてありませんよね。

 そんなときにおすすめなのが伊坂幸太郎さんの小説『オーデュボンの祈り』。普段の生活では想像できない切り口で物語が描かれているので、常識を疑う訓練になります。

 今回は、『オーデュボンの祈り』のあらすじとおすすめポイントを紹介します。

 『オーデュボンの祈り』のあらすじ

 ごく普通のシステムエンジニアだった伊藤は、生きることに疲れ、コンビニ強盗をすることで人生をリセットしようと思い立ちました。

 しかし、彼を捕らえたのは城山という極悪非道の警察官。伊藤は人生をリセットするどころか、元同級生の城山に追い詰められ、弄ばれそうになります。

 そんな伊藤を救ったのが轟。彼は萩島という江戸時代から外界との接触を閉ざしてきた島に伊藤を連れて行きました。

 萩島では、常識では考えられない出来事が繰り広げられていました。未来が予測できて話せるカカシがいたり、人を殺しても罪に問われない美青年がいたり、嘘ばかりつく画家がいたり。

 伊藤はそんな荻島での生活を気に入りましたが、ある日、神のように崇められていたカカシが殺されます。

 一体誰が何のためにカカシを殺したのか。未来を予測できたカカシはなぜそれを防げなかったのか――。

 他のミステリー小説とはひと味違った謎解きが楽しめる物語です。

 『オーデュボンの祈り』のおすすめポイント

1. 次々と提示される気になる謎

 この物語の最大の謎は、未来予測ができるカカシがなぜ殺されたのか?ですが、他にも多くの謎が提示され、次々と解き明かされていきます。

 たとえば、なぜ若葉は轟の家の前で寝転んでいるのか、なぜ園山は嘘しか言わなくなったのか、なぜカカシは話せるようになったのか、などなど気になる謎が盛りだくさん。

 しかも、その謎の答えがどれも納得できるものばかりなので、考える力が鍛えらるんですよね。

 他のミステリー小説とは、一味違った謎解きが楽しめます。

2. 問題を抱えながらも楽しく生きる登場人物たち

 この物語に登場する人物の多くは何らかの問題を抱えています。

 たとえば、伊藤とすぐに仲良くなった日比野は、他人の気持ちを理解する力がなく、余計なことをよく言います。

 画家の園山は妻が殺されてから嘘しか言わなくなり、美人姉妹の佳代子と希世子は他人を見下し、足が悪い田中はその苦労のせいで老けて見えました。

 市場で商売をするウサギは太り過ぎて一歩も歩けなくなり、美青年の桜はうるさい人間が入れば構わず発砲します。

 そんな一癖も二癖もある彼らの生き様を見ていると、問題を抱えていることが、それほど悪くないことのように思えてくるんですよね。

 自分の悩みがちっぽけに思えるほど彼らの魅力にハマります。

3. 心の底からムカつく人間の存在が物語を盛り上げる

 それは警察官の城山のこと。彼はカップルが歩いているとわざと片方にぶつかって、もう片方が車に轢かれるのをみるのが楽しくて仕方がない人間でした。

 「私は大好きな人をなぜ殺してしまったのだろう…」と後悔する姿を見るのが楽しくて仕方なかったのです。

 そんな城山が次に目をつけたのが、伊藤の元彼女。城山は警察官という立場を利用して浮浪者に彼女を襲わせようと計画します。

 この計画がどういう結末になるのか気になって、ページをめくる手が止まらなくなるんですよね。

 ネタバレになるので詳しくは書きませんが、ある範囲でどれだけ力をもっていても、より大きな力の前では権力は無力だということに気づかされる物語です。

 最後に

 伊坂幸太郎さんの小説『オーデュボンの祈り』。普段の生活では想像できない切り口で物語が描かれているので、常識を疑う訓練になります。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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