平岡陽明『道をたずねる』感想/地図の調査員という仕事に興味が持てる物語

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地図の調査員という仕事をご存知ですか?

私は地図と聞くとゼンリンを思い浮かべますが、

平岡陽明さんの小説『道をたずねる』は、まさにゼンリンをモチーフにした地図の調査員の物語が描かれています。

地図の調査員というあまり縁のない仕事に興味が持てる物語なんですよね。

おすすめ度:2.5

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こんな人におすすめ

  • 地図の調査員という仕事に興味がある人
  • 平岡陽明さんの小説が好きな人
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作品の簡単な紹介

今回は、平岡陽明さんの小説『道をたずねる』を紹介します。

癌になった主人公のお爺さんが、人生の大半を捧げてきた地図屋の仕事を振り返る物語です。

作中ではキョーリンという会社が出てきますが、

ゼンリンをモチーフにしていることは明らかなので、本当にあった話がベースになっているのかもしれません。

とはいえ、お爺さんが振り返る人生があまりにも上手くいきすぎるので、

「感動する要素を詰め込んだ作品」という印象が強く、物語にうまく入り込めませんでした。

地図の調査員という切り口が興味深かっただけに残念ですが、私に合わなかっただけかもしれません。

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あらすじ:地図の調査員として働く主人公の物語

物語の主人公は、地図の調査員として働く合志俊介。

彼は中学を卒業してすぐに、父が働いていたキョーリンという地図屋で働こうと考えていましたが、

父がなぜか勉強が得意ではない彼に「お前は勉強に向いとる」と言ったので、高校を卒業してから働くことに決めました。

そんなキョーリンでの仕事は、白地図を片手に街中を歩き、表式を一軒一軒調べて、建物と氏名の入った住宅地図を完成させることでした。

俊介は、見知らぬ土地を訪ねられるうえに、給料まで貰えるこの仕事が気に入っていましたが、次々と難題が降りかかってきて…。

という物語が楽しめる小説です。

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感想①:地図の調査員という仕事に興味が持てる

先ほど紹介したように、俊介は高校卒業後に地図の調査員になりました。

彼が入社したキョーリンは、親友である天沢一平の父・永伍が興した会社で、

俊介が中学生だったときは、社員が20名ほどの零細企業でしたが、いつの日か日本の全建物と全氏名の入った住宅地図を完成させると情熱を燃やしていました。

特に草創期のキョーリンでは、新たな場所に行っては「これから地図を作るので、今広告を出すことを決めれば格安ですよ」と言って広告費を前払いしてくれそうな人を見つけ出し、

着いた日の夕食代や宿賃、地図の製作費や給料、帰りの汽車賃もすべて現地調達していました。

そんな調査員たちの仕事は、ないよりはマシと言われている森林基本図を頼りに街中を歩き、表式を一軒一軒調べて、建物と氏名の入った住宅地図を完成させることです。

地図に載っていない道を見つけたら奥まで歩いて行き、人が住んでいるかどうか確かめる必要がありました。

もちろん、30分歩いても、誰も住んでなかったということもよくありましたが、この手間を省かない人間だけが調査員の仕事ができました。

不確かな地図では売り物にならないからです。

朝倉宏景さんの小説『あめつちのうた』では、グランドキーパーという珍しい仕事に興味が持てる物語が楽しめましたが、

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この小説では地図の調査員という仕事に興味が持てました。

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感想②:主人公たちが簡単に困難を乗り越えていく

俊介には、先ほど紹介した一平の他に、頭のいい庭井湯太郎という親友がいましたが、

湯太郎は父を戦争で亡くし、病弱の母と二人で暮らしていました。

生計は母が竹細工の内職で得る手間賃だけが頼りだったので、母が寝込めば、それすら入らず、弁当を用意することができませんでした。

そんなとき、俊介と一平は、湯太郎に食べ物を分け与えるとプライドを傷つけると言って、彼らもお弁当を食べませんでしたが、

生涯何があっても助け合うと誓ってからは、湯太郎の生活費や大学に進学する費用を一平の父が面倒を見るようになります。

その後、湯太郎は弁護士になって悠々自適な暮らしをするようになるので、簡単に困難を乗り越えたように思えて、白けてしまいました。

俊介の生涯もそうです。

調査員として出かけた街で、声をかけてきた女性にいきなり好意をもたれて結婚します。

しかも、その女性は仕事で家に帰らない俊介に文句も言わず、義理の両親の面倒を見続けました。

また、俊介が調査員のリーダーとして名古屋に乗り込み、ベースとなる地図がなく、東西南北すらもわからない地下街の調査に行き詰まったときもそうです。

俊介は悩み続けた結果、誰でも簡単に思いつきそうな方法を見つけ出したといって喜ぶんですよね。

他にもいろいろ突っ込みどころがありますが、困難が困難に思えないので、あまり物語に入り込めませんでした。

もちろん、青山美智子さんの小説『お探し物は図書室まで』のように、うまく行きすぎる物語は他にもありますが、

それらは『道をたずねる』とは違い、困難に立ち向かう心情やプロセスが楽しめます。

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そこが他の小説とは決定的に違うポイントだと思います。

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感想③:感動する要素があるのに深堀りできていない

では、なぜ他の小説とは違い、困難に立ち向かう心情やプロセスが楽しめなかったのかといえば、

ひとつひとつの要素が深掘りされていないからだと思います。

先ほども紹介したように、湯太郎は貧乏でしたが、一平の父から援助を受けることで簡単に困難を乗り越えました(乗り越えたように思えました)。

俊平も声をかけてきた女性と結婚して幸せな家庭を築き、仕事で困難が降りかかっても簡単に乗り越えていきます。

それだけでなく、物語は俊平が癌になって過去を振り返るところから始まりますが、特に癌である必要性はなく、

中学を卒業してすぐに働きたいと言った俊平に対して、父が「お前は勉強に向いとる」と言った理由も、「うーん…」と思わず声に出してしまうようなものでした。

つまり、貧乏や病気、仕事や恋愛、親子関係など感動する要素は詰め込まれていたのですが、

どれも中途半端な感じがして、物語に入り込めなかったんですよね。

私が、伊坂幸太郎さんの小説『クジラアタマの王様』のように、ぶっ飛んだ設定でも、ひとつのテーマを深掘りしている物語が好きなだけかもしれませんが…。

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まとめ

今回は、平岡陽明さんの小説『道をたずねる』のあらすじと感想を紹介してきました。

地図の調査員という仕事に興味がある方は、ぜひ読んでみてください。

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