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(※『アナログ』表紙より)


 メールやLINE、SNSでどれだけやりとりをしても、なぜだか寂しい…。そんなことありませんか。

 それは私たちがアナログな世界で生きているからです。多くのものがデジタル化されるほど、私たちはアナログなものを求めてしまいます。

 たとえば、音楽。昔はレコードで聞いていた曲がCD化され、今ではスマホで聴ける時代になりました。

 ところが、そんな時代にあえてレコードで聴く人たちが増えています。デジタル化でカットされた音域に価値があると考える人たちがいるからです。

 実際、最新の研究では、その音域に含まれる音が私たちの健康に大きな影響を与えていることがわかりました。

 このように、あえてアナログを選択している人たちがいるわけですが、人間関係もアナログの方がいいのでは?と主張している小説があります。それが、ビートたけしさんの小説『アナログ』。

 今回は『アナログ』のあらすじとおすすめポイントを紹介しながら、なぜ人間関係もアナログがいいのか考えてみたいと思います。

 『アナログ』のあらすじ

 デザイン会社で働く水島悟は、友人との待ち合わせまでの時間つぶしにピアノという名の喫茶店に入りました。

 彼はそこで偶然出会ったみゆきに一目惚れ。連絡先を交換しようとしますが、みゆきがそれを望んでおらず、毎週木曜日の夕方にピアノで待ち合わせをすることになりました。

 こうして二人のアナログな関係が始まります。彼らの恋の行方は!?

 『アナログ』のおすすめポイント

1. みゆきがアナログな関係にこだわった理由に納得

 みゆきがアナログな関係にこだわったのは、デジタルのある特徴を嫌っていたからでした。

 たとえば、ファッション。みゆきの言葉を引用すると、

前はよくブランドの服やバッグなんかも見て回ったのですが、最近は違うブランドでもみんな同じ方向に向かっている気がしてしまって。これといって気に入る物がなくてあんまり行かなくなりました。
最近は個性的な物がだんだんなくなって、一つ流行ると同じような物が大量に出回るというのが風潮ですね。
みんなと同じ行動を取るのが、安心するみたいですね。古くていい物や使い込むと味が出る物は、少数の人にしか売れないから作らないんですよね。

 つまり、みゆきは個性を埋没させるデジタルの特徴を嫌っていたのです。

 そこで、彼女は悟との関係もアナログなものにしようとしました。他のカップルと似たような、ありきたりな関係ではなく、自分らしい関係を築こうとしたのです。

 すべてがデジタル化されていく時代にあえて自分らしい恋愛をする――なんだか羨ましいですよね。

 そんな彼らの恋の行方が気になる物語です。

2. 悟の母親への愛情に感動

 一方の悟も、みゆきとのアナログな関係を気に入っていました。それは幼い頃の影響によるもの。

 悟の母は彼を育てるために、近所のスーパーで店員をしたり、小さな会社で働いたりと一日中働き詰めでした。

 そこで、悟は母との限られた時間を大切にするようになります。友だちと遊んでいる途中でも、母の帰宅時間にあわせて帰りました。まさにアナログな関係。

 しかし、そんな母も今では過度な労働と栄養不足の影響で、骨や内臓が悪くなり、病院で寝たきりの状態です。

 もちろん、悟は親孝行したいと考えていましたが、お見舞いくらいしかできません。

 そんなときに出会ったのがみゆきです。彼女とのアナログな関係は、母への想いと重なりました。そして、その想いが――。

 私たちがアナログな人間関係を求めるのは、心のどこかで他の人とも両親と似たような関係を築きたいと思っているからかもしれませんね。

 悟の深い愛情に涙すること間違いなしの物語です。

3. ビートたけしさんらしい笑いが

 とはいえ、ただの泣ける恋愛小説ではありません。ビートたけしさんらしい笑いが随所に散りばめられています。

 ぜひ、実際に読んで、泣いたり笑ったりしてください。

 最後に

 ビートたけしさんの小説『アナログ』。読めばアナログな人間関係もいいかなと思えること間違いなし!?

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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