webstation plus

(※『All You Need Is Kill 1巻』より)


 ライトノベルがハリウッド映画化されて話題になったこの作品。以前から気になっていたのですが、昨日ようやく漫画版を読みました。

 感想は「想像していたよりも面白かった!」です。2巻で完結する短編なので1時間程度で読み終わりましたが、その後しばらくは物語の世界観に浸っていました。色々考えさせられる作品です。

 今回は漫画『All You Need Is Kill』の感想とおすすめポイントを紹介します。

 『All You Need Is Kill』のあらすじ

 物語の舞台は、異星人が「ギタイ」と呼ばれる化物を送り込んでくる地球。ジャパンの南方、コトイウシ島で繰り広げられる戦闘に参加するため、統合防衛軍に入団したのが主人公のキリヤ・ケイジでした。

 初めて参加する戦闘は今から30時間後。しかし、キリヤは、これから起こる出来事も、そして自分が死ぬことも知っていました。なぜなら――。

 ループするたびに強くなるキリヤ

(※『All You Need Is Kill 1巻』より)


 この漫画の最大の謎は、キリヤが死ぬと出撃前日の朝に戻るところ。しかも、死んでも記憶が引き継がれるので、ギタイにやられた原因を考察&対策することができます。そのため、死ぬたびにどんどん強くなっていくんですよね。その過程が面白い。

 さらにこの物語を面白くしているのは、行動を変えれば結果も変わるというところ。

 作者はこの物語の着想をリセットとコンテニューを繰り返すゲームプレイヤーの経験から得たそうで、失敗も人生の糧として受け入れて肯定して欲しいという想いが込められているそうです。

 キリヤの成長する姿を通してその想いがストレートに伝わってくる作品です。

 ループから抜け出せないのはツライ

(※『All You Need Is Kill 1巻』より)


 ループすることで強くなっていくキリヤですが、その一方でツライことも。

 たとえば、毎朝食堂に用意されているのは同じメニューの朝ごはん、先輩や友人が毎朝同じ話をしてくる、たとえ恋に落ちたとしても一から関係を築きなおす必要がある…などなど。

 もちろん、何度も死ぬ辛さを味わう必要もありますが、何よりもツライのは「同じことの繰り返し」なのかもしれません。そのため、キリヤも「ループから抜け出すこと」にしか興味を持てなくなっていきます。

 「もう一度人生をやり直したい!」と思うことはありますが、その代償は大きいのかもしれませんね。

 圧倒的な強さを誇るもう一人の主人公・リタ

(※『All You Need Is Kill 1巻』より)


 この物語のもう一人の主人公がリタ・ヴラタスキ。

 見た目の可愛さとは裏腹に圧倒的な強さを誇ります。一人でギタイをどんどん倒していく姿に惚れること間違いなし!?

 ではなぜ、彼女はそこまで強くなれたのか。その謎が2巻で語られます。

 つまり、1巻はキリヤの視点で、2巻はリタの視点で物語が進んでいくわけですね。そして最後は再びキリヤの視点に戻るのですが、このときに最大の謎が。ギタイを殲滅してもループから抜け出せないのです。その理由は…。

 最後に

 2巻で完結する短い物語ですが、内容がギッシリ詰まっているので、読了後も色々考えさせられる作品です。興味をもたれた方は、ぜひ読んでみてください。

 関連記事

リーダーシップとは大人の甘さ/和田竜『のぼうの城』

 「リーダーシップ」と一言でいっても、いろいろなタイプがある。たとえば、織田信長。彼は自分に反抗する勢力を徹底的に打ち壊して、自分が理想とする社会を実現しようとした。いわゆる「破壊者」「革命児」タイプのリーダーシップを発 …

「対等な関係」ってどんな関係?/伊坂幸太郎『チルドレン』感想

 伊坂幸太郎さんの小説『チルドレン』は、家裁調査員という聞きなれない職業を目指す学生時代と、その職業に就いてからの出来事を描いた物語です。『サブマリン』という続編が出ているので、復習の意味もこめて再読したのですが、本当に …

『フィッシュストーリー』は異なるジャンルの4作品が楽しめる中編小説

(※『フィッシュストーリー』表紙より)  伊坂幸太郎さんの小説『フィッシュストーリー』。伊坂ワールドで大人気の泥棒・黒澤が活躍する『サクリファイス』『ポテチ』など、ジャンルの異なる4作品を集めた中編小説集です。  黒澤フ …

人間に与えられた「特権」を使わないなんて損!/百田尚樹『風の中のマリア』

 私たち人間には、他の生物にはない特権が与えられている。それは「目標がもてる」ということだ。  人間は、目標を追い求める動物である。目標へ到達しようと努力することによってのみ、人生が意味あるものとなる。 (アリストテレス …

あなたの人生がつまらない理由/下村敦史『生還者』

 コカイン疑惑報道を受けて、芸能界から引退することを決められた成宮寛貴さん。彼は、母子家庭で育ち、中学生のときに母親を亡くした後、弟の面倒をみるなど苦労を重ねた末に芸能界で活躍されていましたが、写真週刊誌「FRIDAY」 …

『約束のネバーランド』は読み始めたら止まらないサスペンス漫画

(※『約束のネバーランド 1』表紙より)  週刊少年ジャンプで連載中の漫画『約束のネバーランド』。  読み始めてしばらくは「ほんわか」しているので、どうなることかと思っていましたが…。40ページを過ぎると、ページをめくる …

『あさひなぐ』は薙刀に全てを捧げる女子高生に励まされる漫画

(※『あさひなぐ 1』表紙より)  ビッグコミックスピリッツに連載中の漫画『あさひなぐ』。薙刀というマイナーなスポーツにすべてを捧げて取り組む女子高生の姿に励まされること間違いなし!?の漫画です。  今回は『あさひなぐ』 …

「ロボットに奪われない仕事」をしよう/池井戸潤『銀行総務特命』

 グーグルの創業者であり、現CEOのラリー・ペイジは、人口知能の急激な発達によって、現在私たちが担当している仕事のほとんどはロボットがやることになるという。加えて次のように断言している。  「近い将来、10人中9人は、今 …

経済格差を失くす方法を教えてくれる小説『フォルトゥナの瞳』

 世界中で経済格差が広がっています。  たとえば、アメリカのある地域では、数年前からバスの最終時刻が20時になりました。スーパーや会社などは20時を過ぎても営業しているので、もっと遅くまでバスを利用したいと思っている人た …

「存在意義がない人」など一人もいない/東野圭吾『ラプラスの魔女』

 人間にとって大切なのは、この世に何年生きているかということではない。この世でどれだけの価値のあることをするかである。 (オー・ヘンリー)  たしかに、「価値」を生み出すことは大切だ。私たちが仕事をするのも「価値を生み出 …