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(※『残り全部バケーション』表紙より)


 伊坂幸太郎さんの小説『残り全部バケーション』。当たり屋や強請りといった悪どい仕事で生計を立てる溝口と岡田が主人公の物語です。

 しかし、溝口と岡田のセリフに促されて前向きな気持ちになれること間違いなし!?

 今回は『残り全部バケーション』のあらすじと感想を紹介します。

 『残り全部バケーション』のあらすじと感想

第一章 『残り全部バケーション』

 年下の女性と浮気をしていた父のせいで解散することになった早坂家。その解散当日。引越しの準備が終わり、業者を待っている間に、父のPHSに一通のメールが届きます。内容は「友達になろうよ」というものでした。

 父はそのメールに返信し、父、母、そして娘・沙希の3人でメールを送った人物・岡田に会いにいくことに。そこで起こった出来事とは!?

 悪どい仕事から手を洗って無職になった岡田と早坂家のやり取りが面白い物語。岡田の「明日から、もう俺の人生、残り全部、バケーションみたいなものだし」というセリフが心に残りました。

第二章 『タキオン作戦』

 悪どい仕事に手を染めていた頃の岡田は、上司である溝口と歩いている途中、背中に青痣のある少年に出会います。その少年は父親から虐待されていました。

 一方、暴力を振るっていた父親は、喫茶店で「タキオン」という物質の存在を知ります。過去へのタイムスリップに応用できる物質だと言うのですが…。

 自己中心的な人物は、自分のことしか大事にしない。他人を見下しているから、他人の忠告には耳を貸さない。唯一耳を貸すとしたら、自分自身の忠告かも。というセリフが印象的でした。岡田のセリフが心に残ります。

第三章 『検問』

 溝口は、岡田の代わりに新たに部下になった太田と共に、ある女性を誘拐して海岸近くの倉庫裏に連れていくことに。その途中、警察の検問に合いますが、なぜか何事もなく無事通過。その理由とは!?

 最後はあっけない終わり方でしたが、溝口と女性の会話が楽しめる物語でした。

第四章 『小さな兵隊』

 小学生だった頃の岡田の物語。彼はクラスメイトから問題児と言われていました。突然、クラスの女の子のランドセル全部にマジックでいたずら書きをしたり、学校の門を青色で塗りつぶしたり。しかし、実際は…。

 目に映るものが全てではないと思える物語。岡田の行動がカッコ良すぎです。

第五章 『飛べても8分』

 ボスである毒島を裏切った溝口は、すべてを岡田のせいにして毒島のもとに戻ります。しかし、そのせいで岡田は毒島に消されてしまいました。

 一方の溝口は、新たな部下・高田と共に当たり屋の仕事を再開。しかし、ちょっとしたミスを犯し、太腿を轢かれ、病院に運ばれることに。その病院には命を狙われている毒島も入院していました。溝口は毒島の信頼を取り戻せるのか!?

 これまでの物語がリンクして、にやけること間違いなしの物語。溝口のセリフも心に残ります。たとえば:

「やっぱり、岡田の言った通り、人に物を頼むには、脅しよりも、『親切』だよ。良くしてやれば、良くしてくれる」
「いいか、飛んでも八分、歩けば十分、メールは一瞬。だとしても、飛べるなら飛ぶべきだ。そんな経験、しなきゃ損だろうが」

 前向きな気持ちになれるセリフが満載です。

 最後に

 『残り全部バケーション』は、物事は捉え方次第でポジティブにもネガテイブにもなることを教えてくれる小説です。たとえ辛い出来事に遭遇していても、岡田と溝口のセリフに促されて、前向きな気持ちになれること間違いなし!?

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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