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(※『ランチのアッコちゃん』表紙より)


 人とのつながりを大切にしていますか。

 仕事や勉強、家事育児など私たちは忙しくなると、どうしても自分の世界に閉じこもりがちですが、それでは元気がなくなる一方です。

 むしろ忙しい時や苦しい時ほど積極的に人と関わり、自分を客観的にみつめたり、人の頑張りに励まされたりすることが大切です。

 そんな想いにさせてくれたのが柚木麻子さんの小説『ランチのアッコちゃん』。今回は『ランチのアッコちゃん』のあらすじとおすすめポイントを紹介します。

 『ランチのアッコちゃん』のあらすじ(『ランチのアッコちゃん』)

 澤田三智子は、生きている理由を見失いました。「なんで生きているんだろう」と自分自身に問いかけるほど。

 それもそのはずです。昨夜、4年間お付き合いをしていた恋人にフラれたからです。

「お前ってNOが言えないっていうより、YESしか言えないんじゃねぇの?」

 と他人の要求に従ってばかりいる性格に愛想をつかされました。

 しかも、三智子には友達がいませんでした。再婚相手と幸せに暮らしている母のもとに帰るわけにもいきません。残念ながら会社からも必要とされているように思えませんでした。

 そんなどん底の三智子に声をかけたのが黒川敦子部長ことアッコちゃん。アッコは三智子に「一週間ランチを取り替えっこしよう」と提案します。

 はじめは面倒なことになったと泣きそうになっていた三智子でしたが――。

 本が読みたい、運動がしたい、もっと仕事に励みたい!?など今すぐ行動したくなる物語です。

 『ランチのアッコちゃん』のおすすめポイント

1. 児童書を読み返したくなる

 『ランチのアッコちゃん』には多数の児童書が登場します。

 たとえば、『大きな森の小さな家』『大草原の小さな家』『プリム・クリークの土手で』。

 他にも『やかまし村』『ロッタちゃん』『長くつ下のピッピ』といった懐かしい児童書が紹介されています。

 『本屋さんのダイアナ』でも多くの児童書が紹介されていたので、著者の柚月さんは児童書が好きなのかもしれませんね。

 とはいえ、児童書を読むのはなんだか恥ずかしいですよね。そんな私たちに柚木さんは、

いいと思いますよ。大人が児童書読んだって。面白いものは、いくつで読んでも面白いでしょ

 と言われています。物語では、その言葉を受けとった三智子が本を読む決意をするのですが、それがきっかけで彼女の人生は大きく変わりました。「好きなことをしたい!」と思うと、エネルギーが溢れてくるからでしょうか。

 とにかく、そんな彼女の姿をみていると、今すぐ懐かしい児童書を読み返したくなるんですよね。

 これまで読書に興味がなかった方も、この機会に児童書に触れてみてはどうでしょうか。

2.仕事に打ち込みたくなる

 先ほど好きなことをするとエネルギーが溢れてくると書きましたが、他にもエネルギーが湧いてくる方法があります。

 それは頑張っている人に接すること。

 第ニ話『夜食のアッコちゃん』では、アッコと三智子が夜食を宅配するのですが、そこに登場する人たちの頑張りに励まされます。

 たとえば、新聞社に勤める整理記者。彼らはニュース記事が届く午後8時から本格的に仕事を始め、翌日の午前2時頃まで時間と戦いながら必死で働いています。

 救急病棟で働く看護師さんもそうです。急患で持ち場を離れる暇がないため、飲まず食わずで働いています。

 もちろんアッコもそうです。夜食を宅配するために夜も寝ずに働いています。

 そんな夜遅くまで頑張る人たちの姿をみていると、自分も仕事に向き合おうと自然と思えるんですよね。

 彼らの頑張りに励まされる物語です。

3. 人間関係を大切にしたくなる

 『ランチのアッコちゃん』は全四話で構成された短編集です。どれも人とのつながりを通じて問題を解決していく物語なので、人間関係を大切にしたくなるんですよね。

 たとえば、三智子はアッコの頑張りに励まされてどん底から這い上がりました。

 アッコは、部長として仕事に励むだけでなく、ホノルルマラソンに挑戦しようと昼休みに走ったり、読書をしたり、カレー屋の手伝いをしたりと大忙し。

 会社が倒産してからは、ポトフを宅配する会社を立ち上げて奮闘します。

 他にも夜遊びをする女子高生を更生しようと必死で生徒を追いかける先生やダメ社員というレッテルを貼られても新規事業の立ち上げに挑戦する若手社員など、本気で何かに挑戦している人たちが多数登場します。

 そんな頑張っている人たちとの出会いは、私たちに大きな影響を与えないはずがありません。

 だからこそ、忙しい時や苦しい時ほど積極的に人と関わり、自分を客観的にみつめたり、人の頑張りに励まされたりすることが大切なんですね。

 いつかは自分も励ます側にまわりたいと思える物語です。

 最後に

 柚木麻子さんの小説『ランチのアッコちゃん』。読めば、本が読みたい、運動がしたい、もっと仕事に励みたい!?など今すぐ行動したくなる物語です。

 気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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